2017 Fiscal Year Annual Research Report
自閉スペクトラム症の中学生に対する通常学級での社会的スキル訓練の効果に関する検討
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17J00941
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
中西 陽 同志社大学, 心理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 社会的スキル訓練 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、自閉症スペクトラム症児を対象とした社会的スキル訓練の効果を測定する指標として、教師がASD児のソーシャルスキルを評価する尺度の作成を試みた。計画通り、京都府の複数の教育委員会に教師対象調査の依頼を行ったものの、協力を得ることが極めて難しかった。 本年度は上のような予期せぬ事態により、当初予定していた教師評定尺度の作成研究を遂行することが困難であった。したがって、本研究課題の一部として既に作成していた親評定版のソーシャルスキル尺度の信頼性と妥当性の再検討および反応性の検討に切り替え、ASD児を対象とした社会的スキル訓練の効果指標の整備に取り組んだ。親評定尺度の作成については、昨年度までに収集していたデータをもとに分析し、論文として学術雑誌への投稿を行い、現在審査を受けている。しかしながら、縦断的調査によってさらに尺度の信頼性や反応性について調査することが、ASD児を対象とした社会的スキル訓練における効果指標の整備に必要な課題であると考えられた。 縦断調査による親評定尺度の信頼性と妥当性の再検討にあたり、ASD児の保護者を対象とした調査が必要であった。本年度は、京都府立こども発達支援センターとの共同研究実施の体制を整えることができ、ASD児のデータ収集に着手した。また、親評定のソーシャルスキル尺度が社会的スキル訓練によるASD児のソーシャルスキルの変化に敏感に反応するかどうかについて、社会的スキル訓練実施のもとに検討する計画を立てた。本研究課題において社会的スキル訓練により適切なソーシャルスキルを獲得することが、ASD児の二次障害として不安症のリスクを低減するかどうかについて検討することを予定しているが、まずは反応性の検討において実施する社会的スキル訓練の前後で不安症状についても測定を行い、前後でその症状に変化があるのかについても検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、当初実施を計画していたASD児のためのソーシャルスキル尺度教師評定版の作成に向けて、京都府(京都市、城陽市、京田辺市、精華町)の教育委員会に、調査協力の依頼を行ったにもかかわらず、政府が主導する「働き方改革」(教師の長時間労働の是正)を理由に、調査の協力を得ることが非常に難しかった。結果的に、協力を得ることができたのは、小規模校1校のみであり、分析は不可能であった。このような予期せぬ事態があったため、本研究課題の進捗状況は当初の見込みよりも遅れてしまったと考えられる。 また、研究課題の一部である親評定尺度の信頼性の妥当性の検討にも着手したが、京都府立こども発達支援センターに来書しているASD児の保護者に個々に声をかけ、研究の説明を行い、参加に対する同意得るという手順で対象者のリクルートを行っていることから、一度に多くの対象者のデータを収集するということが難しい調査であることも、研究課題の遂行にやや遅れが生じる理由と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き、ASD児のためのソーシャルスキル尺度親評定版の信頼性と妥当性の再検討に向けた縦断的調査と社会的スキル訓練の実施にともなう尺度の反応性の検討を実施していく。 本研究課題の遂行における最大の障害は、対象者のデータ収集が非常に難しいということである。親評定版尺度の信頼性と妥当性の検討においては、ASD群と一般群の比較を行う必要がある。したがって、一般の子どものデータについても収集する必要があり、一般の子どものデータは、小中学校に保護者を対象とした調査の配布を依頼する予定である。しかしながら、ASDの特性やソーシャルスキル(子どもの社会的な行動)について調査する項目の中には、非常にデリケートなものも含まれることから、学校側が懸念を示す可能性が考えられる。学校を通して保護者を対象とした調査ができない場合には、対応策として調査会社を通してインターネット調査や郵送調査などを行うといった手段についても検討する必要が出てくるだろうと考えている。 また、社会的スキル訓練実施による尺度の反応性の検討においては、対象となるASD児を20名募集したいと考えている。まずは京都府立こども発達支援センターの小児科医に相談した上で、対象者を紹介してもらうことを考えている。しかし、紹介だけでは予定の人数に達しない可能性もあることから、ASDの子どもをもつ親の会の会員に向けて募集の呼びかけを行ったり、地域のフリーマガジンに募集に関する記事を掲載するなどして、広く募集ができる手順を考えている。
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