2017 Fiscal Year Annual Research Report
維持血液透析患者の食事・水分摂取アドヒアランスに関する社会心理学的要因の検討
Project/Area Number |
17J01022
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
玉浦 有紀 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 維持血液透析 / アドヒアランス / 食事・水分摂取 / 社会心理学的要因 / Body Mass Index (BMI) / アセスメント / 自己申告 |
Outline of Annual Research Achievements |
血液透析(Hemodialysis; HD)の生命予後や、QOLには、透析間体重増加量や血清リン濃度の“アドヒアランス”が関与しており、水分・食事管理の「セルフケア行動」は重要である。しかし、患者には一人一人の暮らしがあり、HDなど、慢性疾患で長期的な自己管理が求められる者に、単に、理想のセルフケア行動を提案するだけでは、上手くいかない。特に、複数の管理が必要なHD患者のアドヒアランス達成率は、他の慢性疾患よりも低く、適切な介入に繋がる評価(アセスメント)が求められる。アドヒアランス評価法には、客観的指標(検査データなど)と自己申告(質問紙など)があるが、実践では、臨床検査値など客観的指標のみで評価され、アドヒアランス不良の原因(「いつ」「どのような場面で」)は、把握されないことも多い。そこで本研究では、医療者が、患者のアドヒアランスと関与する「行動」や背景の「社会心理学的要因」を理解するための評価ポイントを検討し、提案することを目的とした。H29年度は、土台となる基礎データを収集・解析した。まず、577名を対象とした多施設共同横断調査より、食事・水分摂取の特徴を評価する行動(5パターン)と信念(5概念)の尺度を各々開発した。特に、これまでほとんど着目されていない「不規則な食事パターン(例;どこか1食で、まとめて食事をとる)」とアドヒアランスに関連がみられたことは、新たな介入視点と成り得る。また、最もアドヒアランス達成が困難とされる「透析間体重増加量」に着目して、ノンアドヒアランスと関連する要因を検討した結果、「体格(BMI)」により、現体重認識や食事・水分摂取理行動、属性が異なった。今後、ノンアドヒアランスの患者に対し、一辺倒の指導でなく、実際の行動や背景の要因(体格、属性など)を踏まえた情報提供を行うことが望まれる。本結果の公表は、関連学会発表や論文執筆で進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は最終的に、実践で利用可能な「HD患者のアドヒアランス評価・教育媒体(ツール)を提案することを目的とするため、H29年度は、当初の計画通り、ツール開発の土台となる基礎データ収集と解析の遂行に充てた。具体的には、以下の流れで進行させた。平成29年5月までに、3都県(東京、埼玉、徳島)4施設で自己記入式の「質問紙調査」と質問紙回答者の「カルテからの情報収集」を終えた。翌月(6月)には、各施設に、全体と各施設の結果概要を報告書として提出すると共に、調査協力を得た患者に対し、個別で、課題となるアドヒアランス(透析間体重管理、血清P管理など)に焦点を当てたフィードバックシートを返却した(調査IDを用い、患者名など個人情報は不特定とした)。7月以降は、必要なデータが揃った378名(65.5%)を解析対象者とし、1.アドヒアランス評価の指標(尺度)の開発、及び、2.特にアドヒアランス改善が喫緊の課題とされる“透析間体重増加量ノンアドヒアランス”と関連する要因の検討、を検討した。これら解析の結果は、対象施設の医師・看護師・管理栄養士とも共有し、内容が、実践と矛盾せず(日常臨床で対応している患者で理解でき)、介入の視点と成り得るか、数ヶ月に及ぶ話し合いを重ね、推敲した上で、結論付けた。これらの結果を9月以降、複数の関連学会で、順次発表し、公表した。また、論文執筆も進め、現在、2本を国際誌に投稿している(査読中)。また、最終目的であるツール開発に向け、これらの結果に基づく当該患者の食事・水分摂取アドヒアランス評価・教育媒体のたたき台作成を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度の調査結果を基に、栄養教育媒体(B5 20頁程度の小冊子)を作成する。主に、最もアドヒアランスが困難とされる「透析間体重増加量」に焦点を当て、タイプ別(例:食品選択偏りタイプ、不規則タイプ(まとめ食い) など)に、「課題となる理由」と「対策」を提示した媒体を作成する。対策は、各タイプの背景(属性・認知など)を踏まえ、適切な食生活に近づけるための「食事準備の工夫(献立例・購入例を含む)」や「食べ方の提案」を中心とした、より実用的で応用可能な形にする。作成した媒体は、実際に2~3施設の外来HD患者50~100名程度(調査協力者)に配布し、「分かりやすさ」、「実践への活用性」などプロセス評価を行う。最終版は、プロセス評価の結果から、必要な修正を加えると共に、デザイン、イラスト、料理写真などは、専門職に依頼し、より利用されやすい冊子を作成する(予定)。冊子は、関連学会等で、利用可能性の結果公表と合わせた配布を行い、より多くの施設で利用してもらう。また、研究成果公表についても、H29年度中に未発表である内容(1.信念尺度開発、2.アドヒアランス評価法;自己申告と客観的指標でアドヒアランス/ノンヒアランスが異なる者の特徴、3.HD患者の間食の実態とアドヒアランスとの関連、など)は、順次、関連学会での発表や論文執筆を進める予定である。
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[Journal Article] Association between inter dialytic weight gain, and perception about dry weight, and dietary and fluid behaviors based on body mass index among patients on hemodialysis.2018
Author(s)
Tamaura Y, Nishitani M, Akamatsu R, Tsunoda N, Iwasawa F, Fujiwara K, Kinoshita T, Sakai M, Sakai T
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Journal Title
Journal of Renal Nutrition
Volume: ―
Pages: ―
Peer Reviewed
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