2017 Fiscal Year Annual Research Report
Nonintegrability and chaos in general dynamical systems
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17J01421
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山中 祥五 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 可積分性 / 標準形 / 微分ガロア理論 / カオス |
Outline of Annual Research Achievements |
サドル・センター型の平衡点を連結するヘテロクリニック軌道を有する2自由度ハミルトン系において,モノドロミー行列による非可積分性の条件と横断的なヘテロクリニック軌道の存在条件の関係を明らかにした.二つのサドル・センターにおける角振動数が一致する場合には,非可積分であるための条件を満たすならば横断的なヘテロクリニック軌道が存在する.これはホモクリニック軌道の場合に知られていた結果の一般化となっている.しかし,二つの角振動数が異なる場合には,ある仮定の下,可積分であるための条件を満たせば,横断的なヘテロクリニック軌道が存在しないことを示した.これはホモクリニック軌道の場合には生じない現象である.今回の研究により,ハミルトン系におけるヘテロクリニック軌道近傍における,非可積分性と力学系のダイナミクスの関係の解明が進んだ. 次に,平衡点におけるポアンカレ・デュラック標準系(以下では単に標準系と呼ぶ)の可積分性の必要条件と十分条件を求めた. 可積分な系は解析的に標準形に変換できることが知られている.よって,標準系への解析的な変換を求めるという問題と標準系の可積分性を調べるという問題の二つが解決できれば,平衡点近傍において可積分性が決定できることになる.今回の研究では後者の問題に取り組んだ.まず,標準系の係数を用いて可積分であるための十分条件を得た.標準系に対しては共鳴次数と呼ばれる自然数が定義されるが,この共鳴次数が1以下ならば標準系は可積分であるが,2以上の任意の自然数に対しその値を共鳴次数とする標準系が存在することを示した.この結果はハミルトン系におけるバーコフ標準系に対して知られていた事実の類似が,ポアンカレ・デュラック標準系でも成り立つことを意味する.最後に,標準系が特別な意味で可積分となるための必要条件を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ヘテロクリニック軌道を有するハミルトン系の非可積分性と横断的ヘテロクリニック軌道の存在の関係を調べる研究と標準形の可積分性に関する研究において,予定していた以上のペースで結果を得ることができた.今後は,ハミルトン系に対する結果を一般的な力学系への理論へ一般化することが課題である.また,当初の目標の一つである,得られた結果を重要な力学系に応用し,力学的な性質や可積分性を明らかにすることも課題である.ただし,ほとんどの力学系は標準形とは限らないため,標準形に関する得られた結果だけでは具体的な系に対して非可積分性を判定することはできない.そこで,標準形への変換を考慮することにより,具体的な力学系に適用可能な非可積分性判定の手法を研究していく.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により標準系の可積分性を調べる基本的な結果を得られたが,標準形とは限らない微分方程式の平衡点近傍における可積分性を調べるためには,解析的な標準形への変換の存在条件を調べる必要がある.この条件を一般的に与えることは困難であると考えられるため,比較的扱いやすい力学系から始めて,最終的には非可積分であると予想されている力学系に適用可能な条件を与える.また,これまでで与えた標準形自体の非可積分性の条件は,一般的な標準形を考えているために非常に限られた意味での非可積分性の十分条件でしかない.よって,具体的な系の非可積分性を示す手法としては十分なものではない.そこで,標準系の次元やヤコビ行列の固有値にある程度 の条件を仮定することにより,ある特別な形の標準形に対して適用可能な非可積分性の十分条件を与えることを目指す.
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Research Products
(2 results)