2017 Fiscal Year Annual Research Report
The function and spread of saibara court song in Heian culture
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17J01828
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
本塚 亘 獨協大学, 外国語学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 催馬楽 / 宮廷歌謡 / 歌合 / 相撲節 / 旋律分析 / 同音 / 日本文学 / 音楽史学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は次の3点を具体的な研究目的としている、すなわち、(A)「平安期初期歌合と相撲節とにおける歌舞奏楽の機能」(B)「『順次往生講式』における「極楽声歌」「西方楽」の旋律分析」(C)「『催馬楽略譜』の史料価値についての評価」の3点である。初年度は、(A)を中心に研究を進めた。以下にそれぞれの進捗状況を記す。 (A)の平安期初期歌合、相撲節については、それぞれの関係資料を蓄積しつつ、構造的な分析を進めている段階にあり、成果報告には至っていない。ただし、その過程で得られた新たな知見については、これを報告する機会を得ている。儀式における歌舞奏楽の機能、特に唐楽・高麗楽曲と宮廷歌謡との関係を知る上で重要視される、仁明天皇時代を中心とした歌謡の性質、および儀式音楽のありかたなどである。列挙すれば、①「催馬楽「同音グループ」における替え歌生成の原理について」(中世歌謡研究会、8月)、②「催馬楽の成立と唐楽・高麗楽との関係について」(中日音楽比較シンポジウム、9月)、③「視覚化された歌の世界 ――仁明天皇時代の新作楽の作曲意識」(藝能史研究會、12月)の3点である。なかでも③については、研究成果を国際的な場で開陳する機会が得られたことで、諸方面からの反応が期待される。 (B)の平安期における声譜の解読に関して、『順次往生講式』における「極楽声歌」「西方楽」の分析に着手した。上野学園大学日本音楽史研究所にある複写資料を基に、有効な分析方法を検討している段階にあり、次年度以降の資料調査に備えている。 (C)の『催馬楽略譜』についても、(B)と並行し、比較しながら分析を進めている段階にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
資料調査の実施ができていない。事前準備が計画よりも遅れているためである。『催馬楽略譜』等の楽譜史料の解読に難があり、試行錯誤しながら分析手段を検討し直している段階である。 また先日、催馬楽の成立に関する情報を示す重要な資料が学会で紹介されたことを受け、その内容を確認した上で、調査方法を含めて計画を調整する必要があった。
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Strategy for Future Research Activity |
(A)の平安期初期歌合、相撲節については、先年度の蓄積を整理し構造的な分析を進め、両行事の社会的機能についての検討を、史書、古記録等によって行う。第2年度ないし第3年度の成果報告につなげたい。昨年度に引き続き、日本古代史・歌謡関連資料の購入を行う。 (B)の平安期における声譜の解読、および(C)の『催馬楽略譜』の分析に関しては、上記にも述べた通りやや遅れている。楽譜の分析と並行して調査項目の精査を行い、見通しが立った段階で順次調査の実施を急ぎたい。知恩院、来迎院、尊経閣文庫、天理大学附属天理図書館など、手続きのとれた機関から、資料調査を行っていく。
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