• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2017 Fiscal Year Annual Research Report

学習塾による公教育への関与が抱える両義性の検討――自治体と学習塾の連携を事例に

Research Project

Project/Area Number 17J02059
Research InstitutionHokkaido University

Principal Investigator

高嶋 真之  北海道大学, 教育学院, 特別研究員(DC2)

Project Period (FY) 2017-04-26 – 2019-03-31
Keywords学習塾 / 学校外教育 / 自治体と学習塾の連携 / 公設型学習塾 / 追加的な教育機会 / 地方創生 / 教育ガバナンス
Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、自治体と学習塾の連携を対象として、近年急速に進展している学習塾による公教育への関与の実態を明らかにし、学校と学校外の両方を射程に入れた公教育制度のあり方を探究することにある。2017年度は特に、過疎地域の事例を対象に聞き取り調査を行うと同時に、理論的検討を進め、主に以下の3点に取り組んだ。
1つ目は、自治体が学習塾と/学習塾が自治体と連携するに至った背景の解明である。特に過疎地域の自治体では、教育政策的側面(例:基礎学力の向上)と地域政策的側面(例:移住・定住の促進)の両方から学校外教育への関心が高まっている。一方で、学習塾は社会貢献活動の一環として自治体からの要請に応えているものの、断らざるを得ない場合も多いことが明らかとなった。
2つ目は、「公設型学習塾」の概念化である。従来の民間が行う私的な学習塾と自治体と連携して行う公的な学習塾では、制度的にも実践的にも違いが生まれる。そこで、自治体には法・制度・財政・ガバナンスの観点から、学習塾には実践・取り組み・意識の観点から聞き取り調査を行い、公設型学習塾という新たな対象が有する固有の特徴を考察した。
3つ目は、「追加的な教育機会の保障」の概念化・類型化である。公設型学習塾の設置や通塾費用の公的補助などの動向を捉えるために、学校の上乗せとなる教科教育の補充学習・発展学習を「追加的な教育」と呼び表し、それを「補習」「民設型学習塾」「公設型学習塾」に類型化しながら、今日的な特徴を分析・検討している。
本研究から、これまで批判の対象であった学習塾が政策的に受容され、新たな形態の教育機会保障が展開されていることを実証的に明らかにし、それを記述可能とする概念を提起しようとする点に学術的意義を見出せる。これを通して、教育機会保障の望ましいあり方を模索し、実践的・制度的な可能性と課題を論じようとする点に社会的意義を見出せる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究課題は、①学習塾をめぐる教育政策の変容の歴史的解明、②自治体と学習塾の連携の実態調査、③学校と学校外の両方を射程に入れた公教育に関する理論枠組みの構築、の3つに大別される。以下、項目別に進捗状況を記す。
①については、戦後から2000年代前半までの歴史的検討をさらに深め、論文を投稿する作業を進めた。また、新たに2000年代後半以降の検討も行い、学習塾をめぐる政策の変容を通史的に論じる準備を進めている。
②については、研究課題の遂行にあたり適切と考えられる事例を北海道・福島県・長野県・島根県内の市町村から選定して聞き取り調査や取り組みの見学を行った。2017年度は特に、過疎地域での自治体と学習塾の連携を対象としている。この調査を基に、学会発表も複数回行い、さらなる検討・考察を進めて、随時論文を投稿していく予定である。
③については、新たに「公設型学習塾」「追加的な教育機会の保障」という概念を提起しながら、先行研究では十分に分析され尽くしていない事象の検討を進めた。この検討を基に、学会発表も複数回行い、概念のさらなる精緻化を目指して、随時論文を投稿していく予定である。
以上から、全体として研究活動は「おおむね順調に進展している」と判断した。

Strategy for Future Research Activity

本研究課題の今後の推進方策は、①2017年度までの研究成果の論文化、②自治体と学習塾の連携の実態調査の継続、③学校と学校外の両方を射程に入れた公教育に関する理論的枠組みの構築、の3つに大別される。以下、項目別に推進方策を記す。
①については、学習塾をめぐる教育政策の変容、「公設型学習塾」に関する基礎的考察、北海道における自治体と学習塾の連携の拡大、の3つのテーマに関しては研究がまとまりつつある。そのため、この研究成果を論文として投稿する作業を随時進めていく。
②については、2017年度は特に過疎地域での自治体と学習塾の連携を対象とした。そこで次に、2018年度は子どもの貧困に関わる自治体と学習塾の連携を対象に実態調査を進めていく。なお、これには、公設型学習塾の設置だけではなく、通塾費用の公的補助の事例も含まれる。この調査結果は、随時、学会発表・論文化を通して成果公表を目指す。
③については、②で実施する調査の結果も踏まえ、「追加的な教育機会の保障」の概念内容の精緻化、各事象の適切な類型化を行う。特に、通塾費用の公的補助の事例の位置づけについて重点的に検討する。この検討結果は、随時、学会発表・論文化を通して成果公表を目指す。

  • Research Products

    (6 results)

All 2018 2017

All Journal Article (2 results) (of which Open Access: 1 results) Presentation (3 results) (of which Invited: 1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 離島地域における超小規模高校の教育と地域おこし:羽幌町立北海道天売高等学校・天売島を事例に2017

    • Author(s)
      高嶋真之、岩瀬優、大沼春子、木村裕、寺本一平、平子裕、森田未希、篠原岳司
    • Journal Title

      公教育システム研究

      Volume: 16 Pages: 119-156

    • Open Access
  • [Journal Article] ちょっと拝見学校訪問 羽幌町立北海道天売高等学校 全校生徒5名の超小規模校の挑戦―地域を支え、地域に支えられる高校の姿2017

    • Author(s)
      高嶋真之
    • Journal Title

      月刊高校教育

      Volume: 2017年9月 Pages: 10-15

  • [Presentation] 北海道における自治体主導型学習支援事業の実態と課題2018

    • Author(s)
      高嶋真之、佐久間邦友
    • Organizer
      北海道教育学会
  • [Presentation] 過疎地域の高校生を対象とした公設民営型学習塾の取り組みとその特質―北海道足寄町「足寄町学習塾」を事例として―2017

    • Author(s)
      高嶋真之
    • Organizer
      日本教育行政学会
  • [Presentation] 義務教育段階における追加的な教育機会保障をめぐる今日的動向2017

    • Author(s)
      高嶋真之
    • Organizer
      日本教育制度学会
    • Invited
  • [Book] 教育行政学 子ども・若者の未来を拓く〔改訂版〕2017

    • Author(s)
      横井敏郎
    • Total Pages
      276
    • Publisher
      八千代出版

URL: 

Published: 2018-12-17  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi