2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J02082
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
茶谷 研吾 九州大学, 人間環境学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 微表情 |
Outline of Annual Research Achievements |
微表情の情報が表情全体での認識に反映されるとするモデルを考えその妥当性を検討すると共に、微表情の持続時間が微表情その認識に及ぼす影響を検した。 検出や認識の意図を伴わない時でも微表情に対し何らかの処理がなされている可能性が示されているが (Stewart, Waller, & Schubert, 2009)、その具体的な認知過程は明らかにされていない。そこで微表情に関する情報は一定時間内に表出した他の表情の情報と統合される形で利用されているというモデルを設定し、この妥当性を検討した。微表情は通常いくつかの方略で隠蔽されると考えられるため対応する条件を設定し、条件毎に微表情画像を実験参加者に呈示し一定時間内の表情全体に関する判断を求めた。実験の結果隠蔽方法の違いに関わらず微表情がそれを隠蔽する表情と類似している場合表情全体での認識に反映される傾向があると分かった。 典型的な微表情の認知研究ではある画像の呈示中に一瞬だけ別の表情画像を微表情画像として呈示することが多い。この時元々呈示されている文脈表情画像との組み合わせによって微表情の正認識率は変化することが示されていたが (Zhang, Fu, Chen, & Fu, 2014)、微表情の持続時間の定義は再考されていることを踏まえると (Matsumoto & Hwang, 2018)、先行研究の知見の適応範囲には検討の余地がある。そこで微表情画像の呈示時間のみを変更し、文脈表情が微表情画像の正答率に及ぼす影響を検討した。その結果微表情の呈示時間が短い時は先行研究と同様の結果が確認できたが、現在議論されている微表情の持続時間の上限値に近い値の時には前後の表情の影響は確認されなかった。このことから微表情の認識にその前後の表情が影響するのは、微表情の認識が難しい時のみで、微表情の認識が容易な時にはその影響は消失する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究の成果を学会にて報告した際、設定したものと異なる実験条件を追加しそれを操作した時にも当初想定していたモデルだけで説明するのは難しいのではないかという指摘を受け、実際に実験的に検討を行ったところ考慮すべき条件がいくつか存在する可能性があった。微表情の持続時間や課題が意図的な表情に対する評価であるか否かなど、一定時間内の表情の認識に微表情の情報が反映されるかどうかを左右する要因とその組み合わせが当初の想定以上に複雑であり、個々の要因の選定と包括的なモデルを構築するために検討すべき要因の組み合わせの設定に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の計画で検討する予定だった微表情の持続時間等の要因は微表情の情報反映を左右することが本年度明らかになったので、先ずは持続時間のみを操作して実験を行い単独での影響の違いを検討する。微表情の持続時間の定義は近年再考がなされているため表情の情報が統合される表情表出の時間に上限があるのか否か、微表情の情報を収集する十分な時間がある場合表情全体での認識に反映することが容易なのかどうかを初めに検討する。この結果を鑑みた上で、微表情の持続時間を他の要因と組み合わせた時の影響を検討する。特に変化部位は表情の識別に影響し(Meaux & Vuilleumier, 2016)、実際の微表情の変化が部分的であることを踏まえると (Porter & ten Brinke, 2008)、変化部位と持続時間の条件と組み合わせ検討することで、実際の微表情に近い画像を用いて微表情の認識に重要な変化部位を注視するのにかかる時間が表情のカテゴリによって異なるかどうか、それが隠蔽方法によって左右されるかどうかなど検討することができる。実験後は結果を整理しモデルとの整合性を評価した上で、その成果を取りまとめ論文として発表することを目指す。
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