2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J02305
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村山 貴彦 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | がん幹細胞 / MCM10 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん幹細胞は自己複製能と分化能を有し、薬剤耐性も高いことから治療後の再発や転移に寄与すると考えられている。我々はこのがん幹細胞を標的にした効率の良い治療法を確立するため、これらの細胞の機能を正確に捉えることを目的としている。乳がんの臨床検体から細胞を分離・培養し、がん幹細胞様の特徴を有していると考えられる集団とその他のがん細胞集団をそれぞれRNA-seqによって解析した結果、minichromosome maintenance protein 10 (MCM10) の発現量ががん幹細胞様の集団において大きく亢進されていることが明らかになった。データベースを用いてMCM10の発現量とがん患者の予後との関係を調べたところ、多くのコホートにおいてMCM10の高発現と予後増悪との間に相関があることがわかった。そこで我々はMCM10ががん幹細胞の維持・増殖に関与することでがんの悪性化に寄与しているのではないかと考えた。siRNAを用いてMCM10をノックダウンした際、がん幹細胞の機能のひとつの指標となる球状細胞塊(スフィア)の形成効率が有意に減少することがわかった。さらに、western blotによってMCM10をノックダウンした細胞においてNanogやOct-3/4などの幹細胞マーカーとなるタンパク質の発現量が減少していることと、CD24low/CD44highで示される乳がん幹細胞が濃縮されていると考えられる分画の割合が減少することも観察され、MCM10ががん幹細胞様の細胞を維持するうえで重要な機能を有していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
がん幹細胞において重要な機能を有していることが示唆される因子(MCM10)を絞り込むことができた。ノックダウンによってがん幹細胞様の集団の割合が大きく減少したことから、この分子は治療標的となる可能性も考えられる。また、検証中ではあるがDNA複製ストレスのレベルががん幹細胞で高いことがMCM10ノックダウンに対する応答性の違いではないかということを示唆するデータも出ており、具体的なメカニズムについても明らかにしていけるのではないかと考えているため、おおむね順調だと判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
がん幹細胞とそれ以外のがん細胞でのMCM10ノックダウンに対する応答性の違いの理由として、恒常的なDNA複製ストレスの違いが示唆された。そのため、今後はより詳細にDNA複製の際に生じるストレスの大きさやその原因について調べ、なぜがん幹細胞の生存にとって多くのMCM10が必要であるかを明らかにする。また、正常の幹細胞においても同様に重要な役割を担っているのかを調べ、現実的に治療標的とすることが可能であるかを副作用の面から検討する。
|