2018 Fiscal Year Annual Research Report
生殖巣の食品学的品質改善 磯焼けのウニを高級食材へ
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17J02308
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
髙木 聖実 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | キタムラサキウニ / 品質 / 味 / 香気成分 / 遊離アミノ酸 / マコンブ / ワカメ |
Outline of Annual Research Achievements |
磯焼け域から採集して5月から7月にかけて生鮮マコンブを与えて育成したキタムラサキウニと、磯焼け域および漁場であるアラメ群落から採集したウニの生殖巣のGC-MSによる揮発性有機化合物の分析およびGC-sniffing法による香気成分の定性評価を行った。44種の化合物を全実験群に共通して検出した。育成ウニにおいては甘い匂いや好ましい匂いを多く検知した。アラメ群落のウニでは不快な臭いの検知割合が高く、磯焼け域のウニでは検知した匂いが少なかった。ウニ様の匂いはエチルベンゼン、3-メチルブタノール、2-ブタノール、ベンズアルデヒド、2-エチルヘキサノールから検知した。2-ブタノールとエチルベンゼンは育成ウニでは好ましい、アラメ群落のウニでは不快な匂いとして検知した。ジメチルスルフィドは磯焼け域のウニにおいてのみ不快臭として検知され、磯焼け域における動物食を反映したと示唆された。育成により増強した好ましい匂いや甘い香りが、官能評価における好ましい味や強い甘味にも関与したと考えられる。また、ウニの香気成分は食物に大きく依存すると示唆された。 マコンブ葉状部基部およびメカブを与えたウニの生殖巣の品質を給餌開始から3、6、9週間後に評価し、品質が改善する時期を検証した。マコンブ基部を与えると3週間で色彩と硬さが改善して、6週間でうま味が強くなり、大きさを改善した上で甘味を強めるには9週間を要することがわかった。メカブを与えると3週間で甘味が改善して、6週間で生殖巣の大きさ、色彩、硬さが改善し、9週間与えるとよりうま味が強く、苦味が弱くなることがわかった。コンブ処理群のうま味を呈するグルタミン酸と甘味を呈するアラニンの含有量は、それぞれ6週間、9週間後に有意に増加した。メカブ処理群ではそれぞれ9週間、3週間後に有意に増加した。両処理群共に苦味アミノ酸は飼育期間が長くなるほど減少した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ウニ生殖巣のウニ様の匂いの起因物質を特定できた。また、5月から7月にかけてマコンブを与えることによって変化するウニ生殖巣の匂いや揮発性化合物組成を明らかにし、磯焼け域の不快な匂いの起因物質を特定した。さらに、ウニの香気成分が主に食物由来であることを明らかにした。また、マコンブ葉状部基部とメカブを与えたウニの生殖巣の品質改善過程を明らかにし、呈味成分の変化から、味を改善する物質の特定に結び付く最終実験へと大きく前進できた。したがって、上記のような進捗状況とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、マコンブ葉状部基部およびワカメメカブを与えたキタムラサキウニ生殖巣の品質を給餌開始から3, 6, 9週間後に評価し、品質が改善する時期を明らかにした。この実験において、食物として用いた各藻体を3週間毎に冷凍保存した。来年度は、各藻体部位おけるタンパク質、全アミノ酸ならびに遊離アミノ酸含有量の変化を調べ、今年度明らかにした各藻体部位を給餌したウニ生殖巣の遊離アミノ酸含有量の変化と照合し、ウニの消化酵素の発現も考慮して関連を調べる。 今年度、天然の漁場でウニが主に摂食していると考えられるコンブ目褐藻であるアラメがウニ生殖巣の品質に与える影響をマコンブとメカブと比較して評価するための飼育実験を行った。来年度は実験時に冷凍保存した生殖巣を用いて遊離アミノ酸含有量分析を行い、さらに各藻体部位のタンパク質、全アミノ酸、遊離アミノ酸含有量分析を行う。さらに今年度は、マコンブとメカブに多く含まれる各種アミノ酸を添加した人工飼料をウニに与える飼育実験を行った。来年度は、昨年度冷凍保存したサンプルを用いて、各人工飼料に含まれる海水に浸漬前後の全アミノ酸含有量とウニ生殖巣の遊離アミノ酸含有量を分析し、その関連を調べることでウニ生殖巣の味の改善に寄与するアミノ酸を特定する。
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