2017 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀初頭ロシアの「革新的作曲家」の「革新性」再考:先行者の同定と影響の考察
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17J03820
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
山本 明尚 東京藝術大学, 音楽研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 音楽学 / 音楽史 / ロシア音楽 / ロシア・アヴァンギャルド / ロシア / ソ連 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主に言説資料の収集調査と、研究の進展に沿った先行研究の調査を行った。資料収集に際しては、6月から7月にモスクワ、11月にサンクト・ペテルブルク、2月から3月にモスクワに渡航し、ロシア国立図書館(本館、別館、論文部門館)およびロシア国立文学芸術アーカイヴ、マヤコフスキー記念公立図書館などで、日本では手に入りにくい書籍や楽譜、上記の施設でしか入手不可能な雑誌論文、学位論文や自筆の資料を収集(コピー・写真撮影・購入)し、扱われている作曲家や論旨などを抽出し、今後の研究において活用しやすい形で整理した。 以上で収集した資料のうち、とりわけ博士論文の中で多く取り上げる見通しを得られたのは、1920年代の雑誌資料と、作曲家の自筆資料である。本年度の作業はほとんど資料の収集と分類にとどまったが、それぞれのカテゴリに入る自筆資料を比較し、それらの中でどのような類似・相違が見られるかを把握することは、作曲家たちが自らの創作と後進の育成に、どのようなスタンスで向き合っていたのかを示す、ケーススタディと考え、今後そのような作業を行っていく。 その他、次年度以降に行う予定の楽曲分析の準備として、ミルカ編『トピック論オックスフォード・ハンドブック』(2014)およびキャドウォーラダー、ガニェ著『調性音楽の分析:シェンカー理論のアプローチ』(2011、第3版)を参照し、分析法を学んだ。 本年度は以上の作業の成果として、論文発表1件、国内学会発表2件を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ロシア音楽史上に20世紀初頭の音楽を位置づけるために調査すべき先行研究については、国内外での作業により、本年度中に概ね収集でき、また計画通りにそれらを批判検討し、本研究へどのように敷衍すべきかの道筋をつけることができた。当初収集を予定していた文書館や図書館に所蔵されている資料の中で、図書館や文書館に所蔵されている主要な資料は、ほぼ収集できた。しかし、グリーンカ記念中央音楽博物館所在の一次資料については、研究をすすめるうち、資料請求からそれを受領するまで時間を要するために、ある程度必要な資料と請求の段取りの見通しを立てたのちの長期滞在を必要とすると考えられたため、当該文書館の資料については、次年度にまとまった時間を取って収集することとした。 楽譜資料については、これまで研究がある程度まで進められてきた作曲家(例:ロースラヴェツ、ルリエー)の印刷譜についてはすでに図書館で複写することができ、彼らの先行者と目されるチャイコーフスキイの最新の批判校訂版(刊行中)を入手することができた。その一方で、以上の作曲家の未出版自筆譜については、上記音楽博物館に所収されているものが多いため、次年度の資料収集の際に調査する予定である。 以上のような状況から、新しい資料の入手によって修正する必要があるとはいえ、先行研究や自身の以前の研究、および本年度までの収集資料を照らし合わせ、研究上の仮説を立てることが計画通りにできている点に鑑み、「(2)おおむね順調に進展している」を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」に記したように、今年度に収集予定だった資料のなかで、収集しきれていないものが残されている。それらは今後、なるべく早く収集範囲やスケジュールを決定し、一から数ヶ月程度の調査期間を設け、収集することとする。 また、現在最新の研究に関する状況を得るため、国内外のロシア学の専門家とのコンタクトを取り続け、情報交換を行いつつ、研究を推進する。 また、これまでに文献資料によって習得した分析を実践に移すことは、歴史と音楽の内実との両立を図る本研究においては、喫緊の課題であるといえる。そのため、これまで収集した楽譜から選択し、複数のケーススタディを行いつつ、博士研究全体の道筋にそれらを敷衍・反映させていくこととする。
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Research Products
(3 results)