2017 Fiscal Year Annual Research Report
シンプルな物理モデルによる切り紙構造の力学特性-応用に向けた開発原理の提示-
Project/Area Number |
17J04315
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
磯部 翠 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 切り紙構造 / 力学応答 / 材料力学 / スケーリング則 |
Outline of Annual Research Achievements |
“切り紙構造”はシート材料に多数の切れ込みを入れた構造であり、簡単な加工でシートの大きな伸長を可能にすることができる。多様なシート材料が開発される中、その利用の幅を広げることを期待されている。本研究では切り紙構造の物理的性質を解明するため、引っ張り実験における力学応答を調べている。これまではケント紙を加工した切り紙試料を自作の装置で引っ張り、その変形初期の転移現象前後に着目して実験と理論の両アプローチを用いて研究を進めてきた。構造を簡単化したモデルについて弾性エネルギーを導くことで理論式を導き、実験結果と整合することを確認している。本年度は、①ゴム材料を導入した実験、②破断領域の研究、③初期領域における弾性エネルギーの解析的計算、の三点について進捗を得た。 ①ゴム材料の導入…今まで実験に用いてきたケント紙の他に、ゴムシート、ポリスチレン(プラ板)、ポリプロピレン(クリアファイル)の試料を導入して実験を行った。いずれの試料でもこれまでの研究で導いた理論と合致するデータを得ることができ、理論の普遍性が確かめられた。 ②切り紙の破壊の研究…破壊臨界条件に着目した。破断の瞬間をモデル化して破断条件となるのび・力を導いた。これまでの実験結果から破断に関わるデータを取り出し、比較したところ破壊臨界点をある程度説明できることが分かった。 ③初期領域における切り紙の弾性エネルギーの解析的計算…初期の転移現象の定量的理解を目指し、Mathematica を用いてエネルギーの計算を試みた。転移前後(平面内変形・平面外変形)のエネルギーを重ね合わせることで両者をつなぐ一般的なエネルギーの形を導いた。シンプルなモデルから求めた転移点と定性的に一致することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の課題としていた三点の研究に取り組み、成果を出した。この成果については国内外の会議で10件の報告を行った。これらの課題について完全に達成するために次年度で取り組むべき研究内容もはっきりしており、引き続き取り組むことで達成が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ゴム等材料でのデータ収集を進め、紙で見られた振る舞いと比較する。このことで、転移近傍だけでなく破壊臨界状態など幅広い領域において現象の理解を深めることができることが期待される。また、複数列シートでの実験など、応用展開を視野に入れて理論を拡張する。
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