2019 Fiscal Year Annual Research Report
近代中国領出身ムスリムの知的交流と歴史・地理認識の変容
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17J05409
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
海野 典子 中央大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 中国 / イスラーム / 中央アジア / ソ連 / 歴史認識 / 地理認識 / ドゥンガン / テュルク |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、これまで明らかにした、近代中国領出身の漢語を話すムスリムとテュルク系ムスリムの歴史・地理認識の変容、特に中央ユーラシアの歴史・地理や異教徒に対するムスリムの新たな理解をめぐる思想的相互作用が、双方の自己認識や他人間集団との関係、近代ユーラシアの政治・社会情勢に与えた影響を調べた。また、台湾の国立政治大学民族学系、及びウズベキスタン共和国科学アカデミー歴史学研究所に長期滞在し、史料を収集するとともに、現地の研究者やインフォーマントと本研究について意見交換を行った。その結果、以下の三点を明らかにすることができた。 第一に、中央アジアに移住した漢語を話すムスリムはロシア語やテュルク諸語の習得に努め、現地社会への適応を図った。彼らは、中国へのイスラーム伝来に関する漢語の民間伝承をチャガタイ語に翻訳し、テュルク語を話すことのできる自分たちはウイグル人と同じ民族集団であると主張した。第二に、ウイグル人の一部が漢語を話すムスリムとの民族・言語・文化的差異や歴史・地理認識の違いを訴えたため、1920年代にソ連領中央アジアで実施された民族境界画定工作においてウイグル人とドゥンガン人は別々の民族集団として扱われた。この民族区分は現在の中央アジア諸国でも引き続き適用されている。第三に、ドゥンガン人を漢人のムスリム集団とするソ連の見解に反して、中国共産党は1930年代後半に中国領内に暮らす漢語を話すムスリムを、漢人やウイグル人とは異なる単一の民族集団として認定した。その目的は、当時中国共産党が拠点としていた西北地域に集住する漢語を話すムスリムを懐柔し、国共内戦や日中戦争を進める上で彼らのネットワークや戦力を利用するためであった。
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Research Progress Status |
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(8 results)