2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J05535
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
佐藤 弘隆 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 祭礼 / 都市 / デジタルアーカイブ / 町文書 / 京都祇園祭 / 山鉾行事 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度では、京都祇園祭の山鉾に対する聞き取り調査やデジタルアーカイブ、京都祇園祭の山鉾行事に類似した他都市の祭礼調査を行った。 聞き取り調査では、34基の山鉾の保存会の代表者を対象に、各山鉾における現在の人員・資金・場所の確保について聞き取った。それにより、各山鉾が構築する運営基盤には地理的要因や山鉾の形態・規模などを要因として様々な差異が存在することが明らかになり、各町内の住民構成や事業状況などの社会構造の変容にともない、運営基盤を再構築していることが捉えられた。 また、町内に所蔵された祭礼に関する近世・近代の町文書の整理・活用について問題意識を共有することができた山鉾の保存会では、町文書のデジタルアーカイブを行った。このアーカイブはデジタル一眼レフカメラによる俯瞰撮影であり、研究者自らの手でアーカイブ可能な市販の機材や設備を揃えて、自身の調査に適したオリジナルな手法を確立させた。古文書の他にも写真・動画など映像資料のデジタルアーカイブも行った。これらの成果により、近世・近代における山鉾の運営基盤が解明され、近世から近代に移行する際に運営基盤の再構築が山鉾行事の存続・継承に大きく働いたことを見出せた。 他都市での祭礼調査では、京都祇園祭の山鉾行事に類似した全国の山・鉾・屋台行事が行われる祭礼や都市を訪問し、行事の行程や街並みの観察、担い手や住民への聞き取り、資料収集などフィールドワークを行った。これらのフィールドワークを通して、京都祇園祭の山鉾行事との共通点や相違点を見出し、全国の山・鉾・屋台行事を一般化するための視点を検討した。また、これらの都市の人口を国勢調査から分析し、中心市街地における人口の空洞化や大規模マンション開発による人口急増など各地の祭礼は激しい都市の変容にさらされながら継承されていることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画当初では、本年度は博士論文の執筆と提出が予定されていたが、次年度に予定されていた『船鉾 財団法人設立50周年記念誌』の発行が今年度に行う必要が出てきたため、予定を入れ替えて、本年度は『船鉾 財団法人設立50周年記念誌』の執筆と編集、それにともなう調査を行った。本書の内容は次年度に提出する博士論文の内容も含むものである。 この他にも祭礼の運営や地域資料のデジタルアーカイブに関する論文や口頭発表など複数の業績を積んでおり、2年間の計画全体として考えた際に、1年目の経過としてはおおむね順調に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の調査や業績の内容をまとめ博士論文を執筆し、2018年度内に提出する。また、これに関する一連の調査で得られた町文書や映像資料のデジタルアーカイブの成果はWebデータベースとして管理し、それをweb上で一般公開する準備を進めている。これにより、学術上でも、一般でも歴史的な資料を活用しやすい環境の整備を目指している。
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Research Products
(8 results)