2018 Fiscal Year Annual Research Report
帝国日本の同盟外交ー1902年~1933年を中心にー
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17J05593
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三村 佳緒 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 日英関係史 / 日本外交史 / 日本近代史 / 日英同盟 / 満蒙特殊権益 |
Outline of Annual Research Achievements |
1910年に英米仏独日露の資本家団体により結成された中国に対する国際借款団について、借款団内部における交渉の争点となった諸問題が日本外交史においていかなる意味を持つのかについて検討を進めた。 (1)各国銀行団はそれぞれ本国政府に指示を仰ぎ交渉に臨んだが、その背後で行われた政府間交渉に注目すると、借款団加入に際して日本とロシアが承認を要求した満蒙特殊権益は、アメリカが「中国との条約に基づく権利」のみ承認されうると主張した一方で、日米両国との協調関係を望むイギリスは、門戸開放が維持される限り日本の主張は認められると考えていたことが明らかとなった。そしてこのようなイギリスの態度が、日本の勢力圏拡大を阻止するためにイギリスの協力を欲したアメリカを失望させたと考えられる。上記研究成果について、2018年11月25日史学会第116回大会において報告した。論文化には至っていないため、次年度中にまとめて学術雑誌に投稿したい。 (2)上記過程において、第三次日英同盟締結時と同様に、対中国借款問題においてもアメリカとドイツの利害関係の一致という状況が見られることが明らかになった。東アジアへの進出という点でイギリスやフランスに遅れをとった2つの帝国がどのような植民地政策・対中国政策を採用したのか、またそれらに対する英仏および日本の認識がいかなるものであったのかについて分析する必要があると考えられる。この点について、2018年10月にイギリスのThe National ArchivesやBritish Libraryにおいて、また2019年1月にアメリカでの史料調査を行った。イギリスにおいて外務省外交文書や植民地相文書、米国議会図書館においては駐日米国大使など外交官の私文書を、米国国立公文書館(メリーランド州)においては国務省文書を調査した。蒐集した史料の精査は次年度に持ち越される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、本年度においてはワシントン会議で日英同盟が解消される時期までが分析対象となっていた。しかし、第一次世界大戦以前の東アジアをめぐる大国間関係、とりわけ満蒙特殊権益に対する認識のあり方をより緻密に分析することが、大戦後の同盟解消を論じる上で重要な点になると考え、当初の予定を変更した。よって、研究課題自体に大きな変更はないものの、重点を置く部分が変わり、当初の予定よりやや遅れていると評価した。 また海外史料調査と学会発表に時間を割いたため、論文の投稿が予定より遅れている。来年度は研究成果の発表に力を入れる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、今年度に比して論文執筆に注力し、これまでの研究蓄積の発表を積極的に行いたい。 また、海外史料調査は引続き行うが、国内史料への目配りに不十分な部分が学会報告などを通して明らかとなった。日本の外交文書だけでなく、外交官や知識人の私文書、新聞や雑誌史料など、幅広い史料を丹念に検討する。
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