2017 Fiscal Year Annual Research Report
神輿会のフォークロア―グローバル都市の祭礼を生きる人びとの民俗学的研究
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17J05761
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
三隅 貴史 関西学院大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 民俗学 / 祭礼 / 祭り / 神輿会 / 表現文化 / 東京大都市圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
東京圏には、神輿会(年に複数回、祭礼やイベントにおいて神輿を担ぐことを続けている神輿愛好家による集団)と総称可能な神輿担ぎの同好会が1000団体以上存在するといわれている。神輿会は、1950年代後半に、共同体の衰退に伴う神輿渡御開催の危機を背景にして23区東部で成立し、1970年代半ばの「神輿会ブーム」によって急激に増加したことで、神輿渡御での存在感を増してきた。現代東京における多くの神輿渡御では、神輿会に所属する参加者が担ぎ手の半数から9割程度、残りの参加者が地域住民やかれらの友人と、地域住民の参加者の方が少ない現状に至っている。このような東京圏の神輿渡御は、先行研究で論じられてきた地縁的結合を強めるための神輿渡御という意味とは異なる意味を有する行為へと変化している可能性を指摘できるだろう。 本研究の問いは、「現代東京において、祭礼とはいかなる意味を持つ行為なのか」である。報告者は、この問いに答えることを目的として、神輿会と地域で祭礼を支える共同体が実践する表現文化や、成員の価値観、両者の関係性等を対象とした参与観察・聞き取り調査を、東京圏を中心に全国各地で実施している。平成29年度は、前述の問いに対して、「神輿会にとって神輿を担ぐこととは、どういった意味を持つ行為なのか」という細分化した問いから応答を試みた。 平成29年度の研究成果としては、①神輿会と共同体の双方が有している、二元性のある価値観の存在を明らかにできた点、②平成28年度に中心的な研究課題とした、東京圏の祭礼における表現文化の標準化・差異化に関する研究を、現地調査・文献調査をとおして精査した上で、『日本民俗学』に投稿し、掲載された点、③表現文化の標準化・差異化の視点から、京都圏の祭礼における表現文化等の分析が可能なことを明らかにした点、の3点があげられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、特別研究員奨励費と研究遂行経費を利用した上で、31カ所の祭礼・イベント(東京圏14ヶ所、京都圏8ヶ所、その他9ヶ所)において参与観察・聞き取り調査を実施した。その中でも特に、東京圏への祭礼参加と、台東区に本拠地を置くA(仮名)神輿会への参与観察・聞き取り調査を最大の課題とした。その結果として、神輿会、そして祭礼を支える地域共同体の成員が有する経験、知識、表現文化、価値観、歴史性などに対する多くのデータを収集することができた。 また、採用までの準備段階において明らかになった、東京圏の祭礼における「江戸前」と総称される美的意識に基づいた表現文化の創造・拡大・定着の歴史的過程に関しては、本年度の現地調査・文献調査をとおして精査した上で、査読付き雑誌『日本民俗学』への投稿を行い、平成29年度中に掲載されるに至った。本論文は、表現文化に関する研究の蓄積に、標準化・差異化という視点を与えるものとして、一定の貢献をするものであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の現地調査として、東京におけるA神輿会に対する継続調査、多様な神輿会による三社祭宮出し/宮入りに関する語りの収集などを中心として実施する。また、東京での経験を相対化する視点を身に付けることを目的として、ねぶた祭りに対する外部参加者と京都圏の神輿会と共同体等に対する参与観察・聞き取り調査を実施する。 これらの調査と並行して、これまでの調査によって得られたデータの精査を行う。そして、その成果を論文として、民俗学・社会学関係学会へ投稿する。
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Research Products
(4 results)