2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J05972
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
齋藤 菜月 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 共感 / 表情筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の研究により,快・不快の共感を表出する過程やその神経基盤が異なる可能性が示唆されている。本研究は,共感が学習によって徐々に表出されていく過程に着目し,感情価による共感学習の非対称性を解明することを目的とした。 本年度はその目的達成のため,快と不快の共感を同一指標にて測定するための新しい課題を確立することを目指した。先行研究では,自分自身の快感情および不快感情に大頬骨筋と皺眉筋の活動がそれぞれ対応することが知られているため,本実験ではこの二か所の筋活動を測定した。 具体的には,大学生20名を対象に,他者が快・不快・中性のいずれかの画像刺激を受け取っていることを知らされた際の表情筋の活動を筋電図によって測定し,筋活動の増加率を比較した。その際,表情模倣による反応と分離するため,他者の表情を直接観察しない事態を設定した。その結果,他者に快画像が呈示された事を伝えた際には大頬骨筋が,不快画像の際には皺眉筋の活動がそれぞれ増加することが明らかとなった。また,他者にどちらの種類の画像が呈示されるかを予告する刺激に対しても,同様の傾向がみられた。 次に,大学生20名を対象に,ペアが実際の友人だった場合と未知の他者であった場合に表情筋反応の差がみられるのかを,同様の課題によって比較した。その結果,感情価に対応した表情筋活動はペアが友人の場合でのみ有意に高かった。共感特性得点と表情筋活動との関連について検討した結果,個人的苦痛得点が高い参加者は,未知の他者に対しても共感的な反応が見られた。上記の内容は研究計画の研究1にあたり,おおむね予定通りの進捗状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,他者が快あるいは不快刺激を提示される場面において,それを推測する個人の表情筋筋電図を測定することで2種類の共感を分離して推定する方法を検討した。結果として,快の共感は大頬骨筋の,不快の共感は皺眉筋の活動により,それぞれ推定できるという示唆を得た。また,その筋活動は微妙なものであり,画像などでは検出が困難で,筋電図を測定することで時系列的に定量化が可能であることを示した。また,快と不快の共感の機能についてfMRI装置内で表情筋を測定し,解析する手法を身に着けたため,今後はこの方法をfMRIなどの神経画像法と組みあわせることで,共感の神経メカニズムについて明らかにしていく。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験により,共感によって生じる表情筋活動を測定することの妥当性を検討した。今後は,共感が学習によって徐々に表出されていく過程について検討するため,他者にどちらの感情価にあたる画像が呈示されるかを予告する刺激の随伴率を調節し,同様の実験を行う。また,快と不快の共感の機能に違いがあることを実験的に明らかにする。さらに,fMRI装置内で表情筋を測定し,解析する手法を身に着けたため,今後は脳神経活動との関連についても検討できるような実験を進めていく。 得られたデータについては,学会発表や論文としてまとめる準備を随時進めていく。
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Research Products
(2 results)