2018 Fiscal Year Annual Research Report
身体性を考慮した力感覚量推定法の提案とアシスト技術への応用
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17J06986
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岸下 優介 広島大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | Sense of effort / Force percepton / Steering wheel / Haptic feedback / Artificial muscle |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度に引き続き,自動車のステアリング操舵中における主観的な力の感覚量を筋肉の活動度との関係から解析,予測を行う研究を中心に行った.投稿した論文はアクセプトされ,ステアリング操舵中における姿勢の変化によって筋肉の活動度が変化し,それが人の力の知覚量に影響を与えていることを示すことができた.また,筋肉の活動度から高い精度で人の力知覚量を予測することができるといった結果も示した. しかし,姿勢の違いによってどの程度知覚に影響を及ぼすのか(姿勢が変わることによる知覚バイアス)が正確にわかっていない.そこで心理物理実験を行うことで,基準の姿勢(ステアリングを切っていない状態)に対する実験姿勢(ステアリングを切った状態)の知覚バイアス量を求めた.また,知覚バイアス量と筋肉の活動度の関係も求めた.実験結果を解析したところ,姿勢の変化によって知覚バイアスが発生していることがわかった.特にその知覚バイアスの大きさは姿勢が変わること,ステアリングから発生する反力の方向が変化することによって被験者の筋肉の活動度が大きく変化し,それが人の力知覚に影響を及ぼしていることがわかった.また,前回の論文で行った人の力知覚量予測モデルを用いて,筋肉の活動度からバイアスの大きさの予測を行ったところ,ある程度の精度で予測をすることができた.その精度が完全に上がらなかった理由としては,予測モデルの変数として筋肉の活動度のみを用いていることが影響していると考えられる. また,2018年度は人工筋を用いたハプティックフィードバックスーツの開発を行った.既存のハプティックフィードバックスーツでは振動などで疑似的な力しか再現することができなかったが,人工筋を用いることでウェアラブルでありながらも,20N程度の力を発生させることが可能である.この人工筋を用いたフォースフィードバックスーツの内容で,2件の国際会議発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自らの研究成果に関して国際誌論文執筆を行って投稿し,アクセプトされたこと,また定期的に国際学会への投稿を行い学外及び国外の意見を取り入れて自分の研究に活かそうとする試みを行うことに成功しているため,おおむね順調であると評価している. 特に本年度はIEEE Conference on Virtual Reality and 3D User Interfaces (IEEE VR): International Workshop on Superhuman Sportsへの投稿・発表を行い,自分の分野から離れているうえに,国際的な学会で自分の成果を広めることができた.いつもと異なる意見を頂けることは非常に貴重な経験であり,自分の研究にとって大きな糧になったと思える. ただし,「計画以上に研究が進展している」と評価できなかったのは実験を行ったあとの解析に手間取り,今年度中に論文の執筆を目指していたにも関わらず達成できなかったためである.今年度の経験を踏まえて,来年はより計画的に研究を進めていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に実施したステアリング操舵における力知覚バイアス量計測実験の結果を解析し,国際誌論文として執筆することを2019年度の前半に予定している.論文の執筆では,近年出版された論文内で人の感じる重さや力の大きさに関する議論がより活発となっているため,それらの意見を取り込み,引用・比較しながらステアリング操作中における力の知覚量変化について自分の得られた知見とその知見を支えるバックグラウンドについてまとめあげたいと思う. また,自動車のステアリング実験で得られた知見はかなり限定的な領域であるため,より一般的なモデルとして定義し,他の応用先に落とし込むことを考えている.本研究室では人工筋を用いたアシストウェアの開発も主として行っている.人工筋自体は非常に軽くウェアラブルであり,人間の関節に直接作用することによって運動を楽にしたり,補強したりすることが可能である. そこで,自分の研究でも人工筋を用いて人の筋感覚に対してアシストを行い,ただ人の運動を楽にしたり補強したりするだけではなく,アシスト込みの筋肉の発揮度合いを考慮することによって,人の重さ・力感覚を変化させることができるフォースフィードバックスーツの開発を行おうと考えている.このスーツはVirtual Reality(以下VR)と融和性が高く,VR環境下で視覚だけでなく力感も提示することができるようになり,よりリアルな体験を行うことができるのではないかと考えている.開発には本研究室でこれまで得られた知見をスーツ開発の土台として用いることで,期間をなるべく最小限に抑え,2019年度中にスーツの内容で1本国際誌論文を執筆したいと考えている.
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