2017 Fiscal Year Annual Research Report
電波利用機器安全性評価のためのSAR推定法に関する研究
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17J07461
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
大見 峻太郎 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 電磁波比吸収率 (SAR) / 等価電磁流再構成 / アンテナ測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、電磁流分布再構成法を応用した、電磁波比吸収率(SAR)の非侵襲な測定手法を開発することである。本年度は、再構成法を用いて、半波長ダイポールアンテナの近傍に設置された誘電体表面の電磁流を再構成する問題に取り組んだ。この問題では、ダイポールアンテナと誘電体によって放射・散乱される電磁波から、ダイポールアンテナを囲う閉曲面上と誘電体表面の等価電磁流分布を推定する。まず、シミュレーションにおいてダイポールアンテナの近傍に誘電体球を設置し、それらによって放射・散乱される電磁界を球面上で計算した。計算結果より、従来広く用いられていたDual Equation Formulation (DEqF)手法によって電磁流分布を再構成することを検証したが、アンテナと誘電体の間の領域において精度が著しく低下する問題を発見した。これに対し、DEqFに誘電体表面での電磁界連続条件を加える手法を考案し、同手法によって電磁流を精度よく推定することに成功した(国際会議において発表)。さらに、より安定した再構成が可能となるPMCHW形式による定式化を応用し、さらに、プローブ補正法の導入により再構成法を任意のプローブアンテナによる測定で用いることを可能とした。同手法の有効性は、シミュレーションと実測において確認した(国内学会で発表)。 さらに、人体ファントムと同様、損失のある誘電体の表面電磁流分布の再構成について検討した。ここで、損失のある誘電体の場合、内部での電磁波エネルギーの吸収によって推定の精度が低下することを発見した。その解決策として、精度よく推定が行える非損失性誘電体の推定結果を推定の初期値として利用する手法を新たに考案し、損失のある誘電体球面状の電磁流分布を精度よく推定することに成功した(論文誌において発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、アンテナ単体からの放射電磁界から、アンテナを囲う閉曲面上の等価電磁流を再構成する手法の実装・検討を予定としていた。この目的に対し、Dual Equation Formulationを用いて再構成法を実装し、同手法によって等価電磁流が精度よく推定できることを実験・シミュレーションの両者によって確認した。さらに本年度は、よりSAR測定としての応用に近い、ダイポールアンテナ近傍に比較的単純な形状を持つ誘電体が設置された問題に取り組んだ。この問題においては、DEqFに誘電体表面の電磁界連続条件を加えることで、電磁流分布を精度よく推定することに成功した。再構成法の有効性は実験とシミュレーションにおいて確認された。また、損失のある誘電体に対しては、精度が低下する問題が発見されたが、非損失な誘電体の再構成結果を初期値として応用することで、精度の向上が実現できた。本手法の有効性はシミュレーションによって確認された。 以上のように、本年度における研究活動は当初の計画以上に進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に研究した誘電体表面の等価電磁流分布の再構成手法は、誘電体を人体ファントムに、ダイポールアンテナを通信デバイスに置き換えることによって、通信デバイスによって人体内部に発生する電磁界分布の評価に応用することができる。そのため、本研究の目的とするSAR再構成へと応用することが可能である。次年度には、これまで単純形状としていた誘電体を人体ファントムに置き換え、シミュレーション・実験により本手法の有効性をより現実的に検討する予定である。また、人体ファントムは複雑な構造をもつため、再構成手法の計算負荷が大きく上昇することが予想される。Multilevel Fast Multipole Methodなどを用いた計算負荷軽減方法などについても検討する予定である。
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Research Products
(5 results)