2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J08017
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
目差 尚太 琉球大学, 琉球大学大学院人文社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 与那国方言 / 琉球語 / 構文論 / モダリティー / 終助詞 / 話しあいの構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度は、研究の土台としての論の整理、それを明らかにするための自然談話 調査と面接調査を行った。これまでのモダリティー論をさらに進めるために、当初の研究計画の2年目に予定していた「終助詞」を対象にして研究を行った。それは、現代言語学における、次のような事情があるからである。 これまでのモダリティー研究は、場面・文脈の中から一つの文だけを取り出し、抽象的な図式としての文法的な構造を分析してきた。それに対して、工藤真由美2014『現代日本語ムード・テンス・アスペクト論』の否定表現の研究にあるように、「話しあいの構造」の中の話し手と聞き手の相互行為の関係から、文を研究しなければならない。そのような研究状況において、その相互行為を最も映し出す言語形式=「終助詞」を扱うことは非常に重要である。 そのため、受入教授である狩俣繁久教授との議論、または、琉球方言を中心に、さまざまな言語・方言の研究者が参加する沖縄言語研究センター研究会で、ある言語における「終助詞」の研究の内容、その方法はどのようなものが考えられるのか、与那国方言の終助詞「do」と「dja」の記述研究を通して議論した。 結果、九つの観点をもとに、終助辞をもつ文、および、様々なモダリティーをもつ文を記述することが重要であるとまとめた。その中でも、話し手と聞き手の話しあいの構造の中の文に終助詞のある文を位置づけて扱うことが重要であるとまとめた。例えば、聞き手の依頼を伝える文に対して、肯定的な答えを伝えるdoのある文が後続して現れる一方で、dja文は否定的な答えを伝える文として後続する。そこから、「do」と「dja」の文の内容が《望ましい内容》《有益な内容》であるか、《聞き手の望みや欲求にそぐわない内容》であるかを記述できる。そして、その内容の違いが、《聞き手利益への配慮の有無》という話し手の態度につながることを、明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
与那国方言の終助詞「do」と「dja」を記述した結果、終助詞をもつ文、および、あるモダリティー形式をもつ文は、以下の九つの観点にしたがって、分析する必要があるとまとめた。A) モダリティー形式の表す意味を、形態論的な、構文論的な分析で明らかにすること、B)その分析は《文の対象的な内容》《人称》《時間性》を前提に扱うこと、C)モダリティー形式をもつ文を《文の通達的なタイプ》に位置づけて分析すること、D)モダリティー形式をもつ文の中にある単語の性格にしたがって、具体的な分析過程を差し出すこと、E)話し手と聞き手が文の内容に対して知っているかいなかの情報構造を記述すること、F)《文の対象的な内容》、そのタイプと《聞き手利益への配慮》の相関関係を記述すること、G)モダリティー形式をもつ文を話し手と聞き手の話しあいの構造の中に位置づけて扱うこと、H)話しあいの構造の中の文と文の相互関係の意味的なタイプを記述すること、I)その意味的なタイプの体系性も扱うことの九つがあげられる。 その中でも特に重要なのは、Gである。それは、どのようなモダリティー形式をもつ文も、必ず話しあいの構造の中の文に現れるからである。そのため、そのモダリティー形式をもつ文は、話し合いの構造の要素である。一方で、その文は、その話しあいの構造の働きかけを受けて、文の対象的内容が作りあげられる。その内容の作用を受けて、そのモダリティー形式をもつ文の文法的な意味・機能が表現される。そうだとすれば、そのむすびつきの意味的なタイプの体系性を記述することも、重要である。このことは、これまでの標準語と方言のモダリティーの体系的な研究にはない考え方で、重要である。 現在は、そのことにしたがって、与那国方言の質問文と平叙文の相互作用をもとに、それぞれの体系を記述している段階である。この記述の結果を論文として学会誌に投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方策は、29年度の研究の成果と現在の研究の進捗状況で述べたこと、つまり、あるモダリティー形式をもつ文が話しあいの構造の中の文に位置づけられ、その構造=文と文の相互関係の働きかけを受けて、文の対象的な内容が構成され、その内容にしたがって文の文法的な意味・機能が明らかにされることを、分析の土台にして、研究を行う。これからの研究の対象は、1)与那国方言における話しあいの構造の中の質問文と平叙文の相互関係、それもとにそれぞれの文の体系、2)与那国方言における疑問詞質問文と反語表現の関係、3)与那国方言における客観的モダリティー=可能表現の文と必然表現の文、4)与那国方言における推量文と疑い文などの認識的なモダリティーの体系といった、一般的なモダリティーに関する四つを予定している。そして、まとめたものを学会誌に論文として投稿、学会発表する予定である。
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Research Products
(2 results)