2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J08102
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
兼松 佑典 広島市立大学, 情報科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 水素原子核の量子効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は酵素反応の反応速度定数と速度論的同位体効果の新規解析手法の確立を目指すものであり、三年計画の二年目である本年度は新規理論(MACCHA法)の実装の計算効率化と、振動エネルギー評価への応用可能性検証をおこなった。 昨年度の業績として、多成分系分子軌道(MC_MO)法と、断熱近似と調和振動子近似に基づく振動解析の接続によって新規手法(仮称:Mean-field and Adiabatic Components Convoluted under the Harmonic Approximation: MACCHA法)を定式化のうえ、実装を行った。MACCHA法では調和振動解析と同様にヘッセ行列を計算する必要があるが、これまでの実装では数値微分による計算しかできず、系のサイズの増大に伴って計算コストが劇的に増大する結果、大規模系への応用が事実上不可能であった。これを解消するために解析微分によるヘッセ行列計算を行うための実装の拡張を行った。 実装には、これまでにMC_MO法の実装を進めてきた開発版のGaussian 09 Rev. D01および最新版のGaussian 16 Rev. B01を用いた。Gaussianに既存の解析的二階微分のサブルーチンを改変することで実装を行い、昨年実装した数値微分のサブルーチンを用いた際の解と比較することで計算値の妥当性を確認した。また数値微分のサブルーチンを用いるよりも計算速度が向上し、計算時間は従来の調和振動解析とほぼ同程度であることも確認できた。 MACCHA法を[FHF]-水素結合クラスタの振動エネルギーの評価に応用し、実験値との比較により有用性の検証を行った。その成果についてはMACCHA法の定式化と併せて論文投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の成果の論文化を行う過程で、これまでの計算で無視していた成分が計算結果に重大な影響を与えうることが判明し、実装・計算とその考察のやり直しに時間を取られた。また、新たに実施した、計算効率化のための解析微分の実装にも想定以上に時間がかかった。その結果、予定していた大規模分子系への応用テストを当年度中に完遂することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当年度行えなかったテストセットを用いたベンチマーク計算は次年度行う。また大規模分子系への応用計算については、概ね当初の計画通り、受入研究者と相談の上系を選定してMACCHA法の有用性を実証するために行う。
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Research Products
(1 results)