2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J09133
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高木 康裕 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 縄文時代 / 打製石器 / 石器石材 / サヌカイト / チャート / 資源利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、縄文時代草創期を中心とする初期定住期を対象に、打製石器の素材である近隣石材(チャート)と遠隔地石材(サヌカイトなど)の獲得・消費行動を復原し、資源利用の変化という観点から定住化の実態を明らかにしようとするものである。本年度の研究成果は次の通り。 (1)チャート産地推定の参照軸の整備。福井県嶺南地方の河川や海浜など60地点以上を踏査した。2600点以上のチャートの試料を採取し、色調・石質などの諸属性を観察・記載した。これによりチャートの特徴と分布の関係を面的に捉えることができるようになり、今後この地域のチャート製石器の産地を推定する上で基盤となるデータを整備できた。 (2)チャート製石器の産地推定の事例研究。福井県鳥浜貝塚の草創期(多縄文土器期・SⅢ期)のチャート製石器を実見し、(1)で整備した参照軸と比較することで、産地を具体的に明らかにした。 (3)遺跡における石材利用の実態。福井県鳥浜貝塚の草創期・早期(SⅠ~SⅤ期)の資料を実見し、資料化をおこなった。福井県立若狭歴史博物館所蔵の当該期の打製石器約470点を全点観察し、製作残滓を含めた石器組成・石材組成を求め、未報告であった石器群の構成を明らかにした。同時にチャート製とサヌカイト製の製作残滓を中心に80点以上の資料を実測し、製作技術の分析と製作工程の復原をおこなった。この作業により、まとまった点数が出土している多縄文土器期(SⅢ期)におけるチャートとサヌカイトの利用の実態が明らかになった。遺跡数が少ない当該期における石材利用・資源利用を考える上で重要な成果であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、当該期の石材利用を考える上で重要な遺跡である鳥浜貝塚の資料調査と嶺南地域での野外調査を実施し、近隣石材であるチャートと遠隔地石材であるサヌカイトの獲得・消費行動を復原できた。チャートの産地推定法を構成する観察属性の選定・記載、踏査地点の選定、試料の採取、遺物との比較などの各手続きにおいて手法を確立することができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的や計画に変更はなく、引き続き野外調査と資料調査を進め、近隣石材と遠隔地石材の利用動向を明らかにしていく。チャートの産地推定には、広域で密な野外調査と採取した試料のデータ化を必要とし、かなりの時間を要するが、参照軸を一旦整備すれば、その地域内の遺跡に広く適用できるという利点がある。そのため、二年目(最終年度)は、対象地域である近畿地方やその周辺のなかで可能な限り広く野外調査を実施し、参照軸を拡充する。これと並行し、定住化にともなう石材資源利用の変化を描出できるよう、複数の時期・地域の遺跡の資料調査を実施し、産地・製作技術・組成の分析を通して両石材の獲得・消費行動を復原する。
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