2017 Fiscal Year Annual Research Report
Gz蛋白質共役型オーファン受容体Gpr176を標的とした生体リズム調整薬の開発
Project/Area Number |
17J09174
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
國末 純宏 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | 概日時計 / GPCR / Gタンパク質 / Gz / GTPase |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類には脳の視交叉上核(SCN)を中枢とする約24時間周期の体内時計が備わっている。しかし、現代社会においては、昼夜交代勤務や夜型生活による生体リズムの乱れに起因する不眠症や精神疾患、生活習慣病が問題となっている。申請者は、SCNに局在するリガンド未知のGz共役型オーファン受容体分子Gpr176が、中枢時計の周期調節能を有することを見出した。G蛋白質共役型受容体は医薬品の最も重要な標的分子群である。そのため、中枢時計機能に深く関わるGpr176はリズム調整薬の標的として大きな期待が持てる。Gpr176の下流シグナル伝達分子であるGzはGi/oファミリーに属するG蛋白質であり、細胞内cAMP濃度を低下させる作用を持つことが知られるが、その生化学的な性質については他のGiメンバーに比べ未知な点が多い。そこで本研究では、精製Gz蛋白質を用い、試験管内においてGzのGTPase活性をラジオアイソトープ標識GTP を用いたsingle turnoverアッセイにより計測した。その結果、Gzの内在性GTPaseは他のGi蛋白質と比較して100倍程度も活性が低かった。このことからGzはシグナル持続型のG蛋白質であり、概日時計制御に適した分子であるといえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
G蛋白質には共通して内因性のGTPase活性が認められ、GTPを加水分解してGDPにすることで不活性化状態に戻るという性質がある。申請者がGzのGTP加水分解速度を測定したところ、他のGiファミリーと比較してGzのGTP加水分解反応のkcat値は100倍程度も小さかった。つまり、Gzは一度GTPと結合するとすぐには不活性化状態に戻らず、結果として長寿命のシグナルを伝達する。これは秒単位などでの時間分解能という点では不利な性質であるが、時間単位でのシグナル変動が重要なサーカディアンリズムの制御にはむしろGzは優れた分子であるといえる。この結果はGpr176-Gzシグナルが概日時計制御に関与することを支持しており、計画は順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果によって、精製Gz蛋白質を用いた試験管内でのGTPase活性測定の結果、GzとGiの生化学的な反応速度には予想以上に大きな差があることが分かった。この成果の上に立ち、GzとGiのシグナル特性の違いをより詳細に明らかとすることが次の重要な課題であると考えている。そこで、G蛋白質の活性化を観察できる新たなバイオセンサーの開発を目指す。具体的には、G蛋白質が不活性化状態ではαβγサブユニットからなる三量体を形成し、活性化に伴いαとβγに解離することに着目し、スプリットルシフェラーゼの技術を導入することでG蛋白質の活性化状態の変化を発光シグナルの変動として検出する。これにより、Gzが実際に長時間にわたって活性化状態を維持していることを確認する。
|