2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J09310
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
本部 勝大 名古屋大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | 租税回避 / GAAR / カナダ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、わが国が租税回避に対し今後とるべきアプローチを模索するために、1988年に一般的租税回避否認規定(General Anti-Avoidance Rule, GAAR)を導入し、多数の事案に適用してきた実績を有するカナダ法に焦点を当て、カナダがいかなる経緯・議論でGAARを採用し、どのような運用をしてきたかを明らかにすることを通じて示唆を得るものである。 本年度は、研究計画に従い、(1)GAAR導入以前のカナダ法において租税回避がどのように対処されてきたか、及び(2)いかなる経緯・議論を経てGAARが導入されるに至ったかを明らかにすることに焦点を当てて研究を行った。(1)については、当時の判決及び論文を分析することで、GAAR導入以前のカナダの連邦議会や裁判所は、イギリスのWestminster原則の強い拘束の下、租税回避に対して謙抑的な対処をとっていたことを明らかにした。また、(2)については、GAAR立法当時の議会資料を中心に分析することで、1984年のStubart事件カナダ最高裁判決を契機に、従来の謙抑的な租税回避への対処の見直しが図られたものの、当時の政治状況によりその実行が困難となり、租税回避の横行を招いたため、新たな対策手法としてGAARが導入されるに至ったことを示した。 さらに、当初の研究計画では平成30年度に実施予定の(3)統計資料や適用裁判例をもとに、カナダにおいてGAARがどのように運用されているかについて分析することについても、統計資料及び適用裁判例の収集と予備的な検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画に従い、(1)GAAR導入以前のカナダ法において租税回避がどのように対処されてきたか、及び(2)いかなる経緯・議論を経てGAARが導入されるに至ったかを明らかにすることに焦点を当てて研究を行った結果、従来の先行研究では十分に触れられてこなかった点を明らかにすることができた。また、研究の進展に伴い、当初の研究計画では平成30年度に実施予定の(3)統計資料や適用裁判例をもとに、カナダにおいてGAARがどのように運用されているかについて分析することについても予備的な検討に着手することができた。 そして、これらの研究成果については、研究論文として公表し、日本税法学会第107回大会で報告(口頭発表、大阪大学会館、2017年6月10日)するなど、対外的に発信する機会も得られた。 以上から、本研究は、当初の研究計画通りに進行しており、「おおむね順調に進展している。」と考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、前倒しで着手した(3)カナダにおいてGAARがどのように運用されているかについての分析を、収集した統計資料や適用裁判例をもとに本格的に実行する。そして、(1)、(2)、(3)で得られた分析結果をもとに明らかにしたカナダ法のGAARの実像から、(4)日本法が得られる示唆を示すものとする。
|
Research Products
(8 results)