2018 Fiscal Year Annual Research Report
自己表象によるジェンダーと社会――女性のドキュメンタリー映画
Project/Area Number |
17J11223
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中根 若恵 名古屋大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | 映画学 / ドキュメンタリー / セルフドキュメンタリー / 自己表象 / ジェンダー / フェミニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本のドキュメンタリー映画における女性の自己表象(セルフドキュメンタリー)の問題を歴史的・社会的に考察することを目的とする。平成30年度においては、前年度から継続的に扱っているフェミニズム的課題と女性のセルフドキュメンタリーを関連づける研究・調査を深化させ、その問題系統をさらにセクシュアルマイノリティとしての自己を表象する一連のドキュメンタリーの調査へと接続させることによって、研究視野を広げた。具体的な成果は以下の三点である。 第一に、平成29年度から継続的に扱う、病いをめぐる題材と自己表象の関連についての分析を深め、2018年度日本女性学会大会(6月)にて「病を表象する――女性の映画的実践としての信友直子『おっぱいと東京タワー』」と題した口頭発表を行った。 第二に、NHK番組アーカイブス学術利用トライアル(6月~8月)での資料調査と映像制作者への聞き取り調査を基盤にして、私的な出来事を提示する作り手の表現がテレビの技術的コードや表現既約性とどのように関わり合っているのかを分析した。本課題については「テレビ放送におけるセルフドキュメンタリーの実践――NHK BS『極私的ドキュメント にっぽんリアル』シリーズの自己表象を中心に」と題して、日本マス・コミュニケーション学会2018年度秋季研究発表会(10月)で発表を行った。そこで得られた質疑応答を踏まえて、テレビメディアにおける女性制作者のエイジェンシーへの考察へより焦点を当てる形で内容を発展させ、日本映像学会ショートフィルム研究会主催のイベント「テレビドキュメンタリーの詩学」で、「「私」を放映する――テレビドキュメンタリーにおける自己表象の実践」と題した報告を行った。 また第三に、セクシュアルマイノリティの自己表象という課題について、LGBTQ映画祭に関する調査を行い、関連する資料の収集に努めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、平成30年度は女性の映画的自己表象について、主に二つの切り口から調査・分析を行ってきた。 上述した第一、二点の課題については、口頭発表での質疑応答で得られたフィードバックを参照しつつ学会誌への投稿を目指した論文を執筆中である。 また第三点目の課題については、資料の収集・調査に進展があったものの、映画雑誌や映画パンフレットなどの文字資料の調査、そして、映画制作者のインタビューを通した言説レベルでの考察やクィア映画祭に関する調査を行う必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに実施してきた国内外の映画祭や展覧会への参加や、山形フィルムアーカイブや記録映画保存センターでの調査に加え、制作者が個人的に保存している映像・文字資料についても積極的に調査を行っていきたい。 また、初年度から継続的に実施している「フェミニズム的課題と自己表象」のトピックについては、その集大成として90年代に興隆する女性の自己表象について検討する発表を平成31年度8月にカリフォルニアで開催されるVisible Evidence Conferenceで発表予定である。 セクシュアルマイノリティをめぐるトピックに関する研究については、当初の予定からやや遅れをとっているため、映像資料や文字資料の調査やインタビュー調査を実施しつつ、クィア理論を中心として理論的な枠組みを探ることによって、今年度に研究成果として結実させたい。
|
Research Products
(4 results)