2017 Fiscal Year Annual Research Report
Neurotensinにより発現する受精・胚発生・着床誘導因子の探索と応用
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17J11447
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
岡本 麻子 県立広島大学, 生命環境学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 卵成熟 / 受精 / 胚発生 / 卵管 / Neurotensin |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまで、排卵期の卵巣においてNTSが発現し、卵成熟促進に機能することを明らかにしてきた。さらに卵巣での研究に付随し、NTSが排卵後の卵管や子宮にも発現・局在することが認めた。このことから、NTSにより卵管において受精や胚発生を促進する因子、あるいは子宮において着床を促進する二次因子の発現が亢進されることで、受精・胚発生・着床が誘導されると仮設立てた。そこで1年目ではマウスを用い、受精期・着床期の卵管と子宮でのNTSと受容体(NTSR1)の経時的変化と制御機構の解明、NTSが受精・胚発生に与える影響、さらにNTSにより誘導される二次因子の網羅的探索を行った。その結果、Nts遺伝子は受精期の卵管に恒常的に発現する一方、Ntsr1遺伝子の発現は受精期に有意に増加し、その後低下することが明らかとなった。着床期の子宮においてNtsとNtsr1発現に有意な変化は認められなかった。そこで、受精期の卵管におけるNTSR1の発現誘導機構を検討した。通常LH刺激により卵胞から排卵される卵は高濃度のプロゲステロン(P4)を含む卵胞液と共に卵管へと放出される。受精期のマウスにRU486(P4阻害剤)を投与した結果、卵管でのNtsr1の発現は完全に抑制された。従って、生体内では卵胞液由来のP4によりNTSR1の発現が誘起されることで、受精期卵管においてNTS-NTSR1シグナル伝達が亢進されることが示唆された。さらに、交配確認後のマウスにSR(NTSR1阻害剤)を投与した結果、胚盤胞形成が有意に抑制されたことから、NTS-NTSR1系により受精あるいは胚発生を亢進する何らかの因子が誘導されると考えられた。そこで、DNAマイクロアレイを用い、卵管においてNTS-NTSR1系により発現変化する二次因子を網羅的に探索した結果、19の遺伝子の発現促進と16の遺伝子の発現抑制が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は1. 卵管・子宮におけるNTS-NTSR1系の発現と機能解析、2. NTS-NTSR1依存的な受精・胚発生・着床誘導因子の網羅的探索とスクリーニングを行う計画であった。NTSとNTSR1の発現・機能解析においては、着床期の子宮ではNTSおよびNTSR1の発現に有意な変化が認められなかったものの、受精期の卵管では、排卵卵胞胞来のP4によりNTSR1の発現が誘導され、NTS-NTR1系により胚発生が促進されることが示唆された。また現在、DNAマイクロアレイにより卵管でNTS依存的に発現が増加した19遺伝子のスクリーニングを進行中である。以上より、総合的にはおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
卵管においてNTS依存的に認められた19遺伝子が受精および胚発生に与える影響を検討する。卵管は排卵された卵子が精子と受精し、子宮への移動過程で胚盤胞までの初期胚発生が生じる場であることから、これらの候補因子は卵(受精卵)または精子の機能性に影響に影響すると考えられる。そこで、卵の体外受精・発生時、あるいは精子の前培養時に候補因子を添加し、受精率や胚発生率、さらに精子の受精能獲得に与える影響を並行して検討する。以上により、受精期の卵管におけるNTSの役割を解明する。
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