2019 Fiscal Year Research-status Report
省メモリ下における計算の効率化と基本的諸特性の理論的解明
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17K00025
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Research Institution | Tokuyama College of Technology |
Principal Investigator |
義永 常宏 徳山工業高等専門学校, 情報電子工学科, 教授 (50158482)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | チューリングマシン / 交代性計算 / 領域計算量 / 閉包性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,コンピュータの理論的マシンモデルであるチューリングマシンを用い,入力データサイズnに対し,作業領域量(ディスク容量)がloglog n以上かつo(log n) に制限された場合について考察する.なお,作業領域量がo(loglog n)の場合,チューリングマシンは有限オートマトン(主記憶のみの理論マシンモデルとして捉えることができる)と等価であることが知られており,loglog nは作業領域量が意味をもつ下限と考えられる. ただし,同作業領域量では一連の入力データ内の個々のデータ位置を特定できない.これに対し,読込み専用の各データにマーク付けできる機能を付加したインクドットチューリングマシンが知られている. また,本研究では,同領域量における並列計算の有用性に関する考察もその目的の1つであり,これについては,並列マシンモデルの1つとして位置づけられている交代性チューリングマシンを用いる. 当該分野の研究の1つにマシンによる受理言語のクラスにおける閉包性に関する考察がある.すわなち,あるマシンが受理する言語にある演算を作用させた言語が,また同じタイプのマシンによって受理できるかどうかという特性の解明である. 2019年度では,交代性インクドットチューリングマシンを用いて,作業領域量がloglog n≦L(n)=o(log n)を満たす関数L(n) に制限された場合の受理言語クラスの閉包性について考察した.存在状態のみに限定された同マシンの受理言語クラスは,共通集合や連接等のいくつかの代表的な言語演算に関して閉じていないことを示すことができた.なお,この結果をまとめた論文は採択され,本年の10月に掲載される予定である.また,本研究の1つの目的に乱択計算も対象となっているが,その導入として関連する小さな結果を学会で発表している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
存在状態のみ制限された交代性インクドットチューリングマシンを用い,作業領域量がloglog n≦L(n)=o(log n)を満たす関数L(n)に限定された中での並列計算における言語クラスの閉包性について考察し,ある成果を得ることができた.また,この結果をまとめて投稿した論文も採択され,論文誌に掲載されることも決定している. しかしながら,「存在状態のみ」という制約を除いた交代性計算の場合についてのより一般的な結果は得られていない.また,当初の計画では当該年度は,乱択計算の有用性に関する考察にも着手する予定であったが,まだ進捗していない.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究を継続し,まずは対称となる「全称状態のみ」に制限された交代性計算の場合についての閉包性の考察を行い,これまでに得られた結果を集約することで,制約のない交代性計算に一般化する方向で進める. また,このことと平行して,乱択計算に主軸を移しつつ,作業領域量がloglog n≦L(n)=o(log n)を満たす関数L(n) に限定された場合の乱択チューリングマシンを用いて,前年度までと関連する考察も展開していく予定である.具体的には,上記L(n) に限定された作業領域での並列計算と乱択計算の差異,同乱択チューリングマシンによる受理言語のクラスの閉包性などに関する考察である.
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Causes of Carryover |
プロシーディングスからの情報収集を予定していたが,本研究に関連する内容が記載されている適当なもの見つからなかったため,学内から無料で使用できるオンライン・ジャーナルを中心に情報収集を行った.また,学会・研究会等の開催場所の関係から旅費の支出が予定していたより少額であったため,次年度使用額が生じた. 研究成果を学術雑誌に掲載するための費用の一部,および文献購入費の一部として使用する予定である.
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