2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03434
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
森川 恭剛 琉球大学, 人文社会学部, 教授 (20274417)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 沖縄戦後法制史 / 米国民政府裁判所 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の対象は、琉大附属図書館で保管されている米国民政府裁判所等の刑事確定訴訟記録の複写製本資料である。2020年度は、1954年の1年間分の記録について、事件目録化の作業を終え、そして沖縄人民党事件とその関連事件の記録については、訳出し、解説を加え、さらに米国民政府裁判記録に関する解題を付して刊行するための作業を進めた。 同事件の大半の記録は「畠義基ほか」という表題の下に収められており、最初に瀬長亀次郎と又吉一郎に対する各起訴状があり、次に瀬長の裁判準備手続の記録があり、そして瀬長・又吉の裁判手続の記録へと続く。最後に畠義基に関する記録があり、この間に上原康行や大湾喜三郎ら35名に関する記録が差し挟まれている。これらを一事件としてまとめるのであれば、上級軍事裁判所で審理され、冒頭に収められた瀬長・又吉裁判を基本にして「瀬長亀次郎及び又吉一郎ほか」と表題を付したほうがよさそうである。しかし犯罪の形態上は畠の「不法在留」事件が中心にあり、基本的に瀬長らはその共犯でるため、簡易軍事裁判所の軽罪事件の被告人の名の下に、関連する複数の事件をまとめるという異例の整理方法が採用されている。軽罪を手掛かりにして大事件が立件されたことが、ここからも理解できる。 また、1950年代後半の売春事件に関する記録についてスキャニングをして、整理をした上で、その重要事件については訳出し、研究ノート「戦後米軍刑法と強制売春(1)」の表題で、その成果の一部を研究紀要に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度までに全935冊の裁判記録のうち、「横田事件」83冊を除くものについて、全事件目録化の基礎作業を終え、研究4年目にあたる2020年度からの残り2年間で、全事件目録の完成を目指す予定であったが、2020年度は、図書館の利用が制限されるなどしたため、個別の事件に関する検討を優先的に進めた。また、そのためスキャナーを購入し、一部の裁判記録については電子データ化して利用の便宜を図ることにした。 全事件目録化の作業には遅れが生じているが、個別の事件について詳細に検討を加えることができ、本記録の読み方や利用方法について理解を深めることができた点では有意義であった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる2021年度は、引き続き1950年代後半の売春事件に関する裁判記録の翻訳と分析を行い、必要に応じて電子データ化の作業を進める。 また、同じく1950年代の土地闘争に関する事件についても分析を進め、これらを素材にした研究会を開催し、次年度以降に計画される本裁判記録を用いた分野横断的な共同研究の土台作りをする予定である。 全事件目録の完成に向けた作業については遅れが生じており、最終年度においても図書館の利用制限が続いているため、作業再開の目途は立たないが、できれば本年度後半期において1954年前後数年間分については事件目録を完成させ、その公開に向けて関係機関と協議を始めたい。
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Causes of Carryover |
2020年度は旅費の執行がなく、代わりにスキャナーを購入したが、その余剰金として残額が生じた。2021年度は配分額が少ないので、これを沖縄戦後法制史に関する図書購入費にあて、土地闘争に関する個別事件の分析に活かす予定である。
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Research Products
(1 results)