2021 Fiscal Year Annual Research Report
United States of Civil Administration Criminal Courts Cases in Post War Okinawa
Project/Area Number |
17K03434
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
森川 恭剛 琉球大学, 人文社会学部, 教授 (20274417)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 米国民政府刑事裁判所 |
Outline of Annual Research Achievements |
米国民政府裁判所の刑事裁判記録について全事件目録を作成し、データベース化する作業を進めた。同時に1954年の沖縄人民党事件に関する記録を訳出し、解説を付けて公表したほか、「戦後米軍刑法と強制売春」の標題で研究ノート(2)(3)を琉大法学に発表し、当該記録を用いて沖縄戦後史を刑事法的に研究することを試みた。このような作業を通して次の新たな課題(沖縄再審論)を見いだすことができた。 1972年に沖縄の施政権が日本に返還され、日本国憲法が沖縄に再施行された。しかし沖縄の裁判所の刑事裁判権やその確定判決の効力は、奄美返還時とは異なり、法的安定性を重視する観点から、軍と民の裁判所を問わず、憲法上疑義がないとされる限りで、原則として承継された(沖縄返還協定 5条3項、4項)。琉球政府からすれば、特に軍の裁判所で琉球住民らが刑事裁判を受けさせられたことは、それ自体が被害補償の対象というべきであり、刑法の国外犯規定を準用して裁判をやり直す方法では、例えば返還前の無許可基地立入行為について、返還後に米軍法令の罪も日米地位協定刑事特別法2条の罪も適用することができなくなるので、安定的に米軍の利益が保護されないと考えられたのであった。そして民の裁判所については1952年4月28日以降のもの、また軍の裁判所については1955年4月10日以降のものについて再審請求権が保障されたが、再審請求はこれまで行われていない。 返還前の軍の裁判所では裁判書謄本請求権や公判調書閲覧権が保障されておらず、再審請求の手がかりがなかったことが、その一つの理由であると推測できる。しかし本研究により、真犯人が明らかになっているのに取り消されていない有罪判決があることが分かった。また、返還時に憲法上の疑義を認めないという建前で判決の効力が承継されているので、いわゆる憲法的再審事由に基づく再審請求の可能性も考えることができる。
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Research Products
(4 results)