2018 Fiscal Year Research-status Report
Russia's Asia policy after the annexation of Crimea: Sinocentrism and/or Diversification
Project/Area Number |
17K13280
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
加藤 美保子 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 特任助教 (70612018)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ロシア外交 / 主権 / 北朝鮮 / 東方シフト / 日米同盟 / 北方領土 / 平和条約 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に行う予定であった課題①「ロシアのクリミア編入はロシア外交原則の変更といえるのかについてソ連崩壊後の事例比較から明らかにする」については、1990年代と2000年代のロシア外交指導部の主権認識とその解釈の変化に着目して分析し、7月に行われたAssociation for the Borderlands Studies (ABS)世界大会で英語報告を行った。主にロシアと東欧諸国の関係を専門とする研究者から有益なコメントが寄せられ、それらを反映しながら英語論文を修正している。 課題②「欧米諸国からの経済制裁が続くなかで、非欧米諸国(主に東アジア諸国)との関係はどのように変化するのか」については、二年目に予定していたロシアの朝鮮半島政策について、ロシア-北朝鮮関係の分析に着手した。研究開始時の予測とは異なり、朝鮮半島におけるロシアのバランス政策は一定の成果をもたらしているのではないかと考えられる資料が集まっている。つまり、分断状況と非核化をめぐり対立してきた南北の双方へのロシアの接近は、ロシアへの不信感を高めるというよりは、地域における均衡維持の補完的な役割の余地をもたらしている。また、さらなる緊張を招くというよりは、ローカルな多国間協力でロシアが必要と見なされるなど、一定の効果がみられる。これらの分析結果は、北東アジア学会共催シンポジウムで報告した。 また、課題②に関しては日露関係についても、ロシアのアジア重視政策と領土交渉の関連性や、ロシアの日米同盟観について研究を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目に開始する予定であった課題①については2年目に着手することになったが、課題②については、3年目前半までに終える予定であったロシアと中国、ベトナム、朝鮮半島、日本との関係についての分析を、2年目までに一通り終えることができた。今後それぞれの二国間関係について研究を深めていく必要があるが、現在までに過去20年間の二国間関係の推移とクリミア編入後の変化について資料の分析を行い、シンポジウムや学会で報告をすることができた。課題①に若干の遅れがあることと、①②ともに査読雑誌への投稿に時間がかかっていることが懸念されるが、全体としては計画に沿って仕事を進められている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、前年度までの研究成果を査読雑誌に投稿することを優先的目標とする。また、課題①については既存の主権国家体系に対するロシアの貢献について正と負の両面から考察する。その際、旧ソ連空間と東アジアの具体的な事例比較を行う。また、課題②については、昨年度の成果を踏まえ、ロシアの朝鮮半島政策についてロシア-韓国関係の立場から分析を行い、その成果を国内外の学術会議で報告する。
|
Causes of Carryover |
研究代表者は、人間文化研究機構総合人間文化研究推進センター研究員として、派遣先の北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターに所属し「北東アジア地域研究推進事業」の研究体制の運営と調整を担っている。平成30年度は当該事業の中間実績報告の年度に当たり、事業のとりまとめ作業が年度の後半に集中したため、予定していた海外調査の日程が確保できず、旅費の使用が少なくなったことが主な理由としてあげらる。海外調査は次年度に行う予定である。
|