2021 Fiscal Year Annual Research Report
Russia's Asia policy after the annexation of Crimea: Sinocentrism and/or Diversification
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17K13280
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
加藤 美保子 広島市立大学, 付置研究所, 講師 (70612018)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ロシア / 主権 / 中ロ関係 / クリミア以後 / 国際秩序 / 東方シフト / プーチン政権 / 修正主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、①2014年3月のクリミアへの武力介入とロシアへの編入は、ロシアの外交原則の根本的な変更なのか、②欧米対非欧米という対立構造が浮上するなかで、アジア諸国、特に対ロ制裁に消極的か不参加であった戦略的パートナー諸国、韓国、日本はどのように位置づけられるのか、という点を検討することであった。 これらの問いに対し、5年間の研究活動を通じて発表した論文(7本)、研究報告(16件)で以下の点を指摘した。第一に、1990年代後半から2010年代に入るまでのロシアは、米国主導の国際秩序に不満を表明する一方、その枠内で戦略的安定を享受する側面があった。特に、アジア太平洋地域の日米同盟の役割について、外務省に近い専門家らは中国および潜在的脅威に対する抑止力として評価していた。しかし2014年前後から、グローバル・レベルでも地域レベルでも、言説面での対立に加えて、既存の秩序に対する探り、挑発、軍事的威嚇行為の増長が観察されるようになってきた。特に、ウクライナに対する侵略戦争は、ポスト冷戦期に維持されてきた現状維持原則から修正主義への変更を意味している。 第二に、2010年代後半、モスクワの外交(史)専門家の間では、多極秩序への移行期間は紛争が多発するため、国家間の協調や対等性を重視する多国間主義を支持する議論が生じていた。しかし、プーチン政権では、欧米に敵対的で近い外国を勢力圏とみなし、軍事力行使を選択肢とする考えが政策として採用され続けてきた。この文脈でアジアを見ると、多角化、多国間主義、協力が適用されるのは、中国、インド、モンゴル、ベトナムなどの戦略的パートナー諸国である。日本、韓国では、プーチン政権が掲げる「東方シフト」に期待が持たれたが、ロシアは米国の同盟、第二次世界大戦の敗者として日韓両国に対処する傾向を強めており、政治が経済協力を左右する状況が固定化しつつある。
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Research Products
(4 results)