2017 Fiscal Year Research-status Report
ゼミナール実践における技法の理論化-教員の経験に基づく暗黙知の解明-
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17K17990
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
伏木田 稚子 首都大学東京, 大学教育センター, 准教授 (40737128)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大学教育 / 学習環境 / ゼミナール / 暗黙知 / インタビュー調査 / 質的分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、ゼミナールの実践に関する報告資料のレビューと、過去に教員を対象に実施したインタビュー調査の回答データの分析を行った。その理由は、ゼミナール実践における教員の暗黙知を探索的に検討するための第一歩として、ゼミナールを通じた学生の成長に対する期待と、それを実現するための方針に焦点を当て、共通点と相違点を明らかにすることが重要だと考えたからである。 具体的には、「ゼミナールでの学習を通じて、学生にどのように成長してほしいと考えているか」、「なぜ、そのような活動や指導を行ったのか」という質問に対する教員の回答データを分析に用いた。MAXQDA 12を使用し、意味のまとまりによる文書テキストの切り抜きとコーディング、文書-コード・マトリックスによるケース間の比較分析という手順で進めた。 その結果、ゼミナール実践の前提に、学生の卒業後を見据えることが共通しており、その中でも多くの教員が、就職活動への橋渡しを意識している現状が示された。さらに、臨機応変な対応力や行動に対する責任感といった「社会性」の成長を期待している教員は、学生に幅広く学習させることに、「基本的な思考力」を求めている教員は、自分の頭で考え、徹底的に調べさせる活動に重点を置いている傾向などが示唆された。 ゼミナールを実践する教員が、どのような信念を持ち、何を意図してさまざまな活動や指導を展開しているのかという技法については、これまで個人の暗黙知に委ねられてきたところが大きい。そのため、等閑に付されてきた実態を検討した本研究の結果は、ゼミナールの学習目標をどこに設定し、到達するための支援をいかに行うべきかを模索している教員にとって、経験に基づく有用な知見になりうると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、教員が効果的だと実感しているゼミナール実践の技法について、全体像を把握するためにインタビュー調査を行う予定であった。けれども、調査前の仮説を生成する段階において、過去に実施した調査の回答データを再分析したところ、数(十)年の担当経験に関する内省が含まれていることが判明した。そのため、新規の調査を開始する以前に、質問項目をより精査すべきであると判断し、十分な時間を費やすよう計画を変更した。そのため、応募時の研究計画調書と比べると、進捗がやや遅れているのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究では、ゼミナールを通じて教員が学生に期待する成長や、到達するために必要だと認識している活動および指導という観点から、ゼミナール実践の技法に関する仮説を生成することができた。そうした仮説の検証を目的として、平成30年度は、15名~20名程度の教員(人文学、社会科学、総合科学系学部に所属している専任講師以上)を対象に、60分~80分程度のインタビュー調査(半構造化面接法)を実施したい。その際、引き続いて実施予定の参与観察を視野に入れた上で、(1)教員が当該の技法を意識して行っているか、(2)応募者をはじめ第3者から観察可能かという2点を基準に、「教員が効果的だと実感している技法には、どのようなものがあるのか」という全体像を把握する。 さらに、「それぞれの技法は、どのような場面で、何を意図して使われるのか」という、事例に基づいた理論を導出するために、参与観察を行う予定である。前述のインタビュー調査の協力者を対象に、担当ゼミナールへの半年以上の継続的な参加とフィールドノートの記録、各種データ(ICレコーダー、カメラ、ビデオカメラによる音声や映像情報、配布資料、課題に関する提出物等)の収集を依頼したいと考えている。ただし、調査対象者の意向や研究実施者の職務により、定期的な参加が難しい場合は、音声や映像の記録を代替してもらえるよう交渉するほか、教員や学生に追加のインタビュー調査を実施する。 以上の研究を通じて、「知識の探究や汎用的技能の成長に効果的なゼミナールを実践するために、教員が行っている方法とその手順」を明らかにし、多くの教員に共通してみられる特徴だけでなく、少数ではあるが個性的な取り組みにも焦点を当てていきたい。もし、どちらか一方に視点を絞らざるを得ないときは、複数の実践に類似する技法の解明を優先する。
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Research Products
(2 results)