2018 Fiscal Year Research-status Report
ゼミナール実践における技法の理論化-教員の経験に基づく暗黙知の解明-
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17K17990
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
伏木田 稚子 首都大学東京, 大学教育センター, 准教授 (40737128)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大学教育 / 学習環境 / ゼミナール / 暗黙知 / インタビュー調査 / 質的分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に続き、過去に教員や学生を対象に実施したインタビュー調査の回答データの分析を行った。並行して、翌年以降にはじめてゼミナールを担当予定の教員(以下、教員Aと表記する)を対象に、自身にとっての理想的なゼミナール像やその時点で抱えている不安に関するインタビュー調査を実施した。このようなアプローチをとった理由は、平成29年度の研究によって多くの教員は学生の成長を最大限に引き出すための試行錯誤をしていることが明らかになっており、特定の一事例を継続して探究する上で、複数事例の共通点や相違点は重要な観点になり得ると考えたからである。 教員Aに対するインタビュー調査では、「所属している大学または学部では、どのようなゼミナールが展開されているのか」「具体的に、どのようなゼミナールを実践したいと考えているのか」「今の時点で、ゼミナールを実践することに対して何か不安を抱えているか」などの質問をもとに、60分程度の半構造化面接法を適用した。その結果、【学生時代の経験に基づく理想像】(学部や大学院の頃に経験したゼミナールが素晴らしく、それに近い実践を行いたいという願望)があるものの、【現状との不一致から生じる苦悩】(理想的なゼミナールを実現するためには、現状にさまざまな障壁や問題があり、実現が難しいという悩み)や【漠然とした強い焦り】(何もかもが初めてのことで、何をどうすればよいのかわからないという不安)を有している様相が示された。 過去の調査データの分析では、ゼミナールを実践する教員の多くが学生の卒業後を見据え、社会性や基本的な思考力の成長を期待し、幅広い学習や徹底した探究に重点を置いていることが示唆されている。けれども、そうしたある種の「型」を確立するまでのプロセスは検討できておらず、その入り口ともいえる初任教員の心構えに焦点を当てた本調査は、重要かつ新規な知見をもたらすと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初当初の計画では、「ゼミナールにおける活動や指導は、具体的にどのような場面で、何を意図して行われるのか」という理論を導出するために、参与観察を行う予定であった。けれども、対象として最適なゼミナールの開講は2019年4月であることが判明したため、調査を1年間遅らせる形で計画を大幅に変更した。そのため、応募時の研究計画調書と比べると、進捗が遅れているのが現状である。 ただし、ゼミナールの開始前に、担当教員にインタビュー調査を実施し、自身にとっての理想的なゼミナール像やその時点で抱えている不安を明らかにできたため、一事例を詳細に検討するという目的は、十分に果たすことが可能だと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
ゼミナールの実践に関する暗黙的な技法について、特定の事例に基づいた理論を導出するために、参与観察を行う予定である。具体的には、前述の教員Aが担当するゼミナールにおいて、前期(4月~7月)と後期(10月~1月)に複数回参加し、フィールドノートの記録、質問紙調査の実施、各種データ(ICレコーダー、カメラ、ビデオカメラによる音声や映像情報、教員による配布資料、課題に関する学生からの提出物等)の収集を計画している。ただし、調査対象者の意向や研究実施者の職務により、定期的な参加が難しい場合は、音声や映像の記録を代替してもらえるよう交渉するほか、教員や学生に追加のインタビュー調査を実施する。 以上の研究を通じて、教員が学生の成長を引き出すためにどのような技法をどのような場面で適用し、成功や失敗を経験しながら自分なりの「型」を創り出していくのかを明らかにしたい。それにより、右も左もわからないと悩む初任教員に対して、ゼミナールを実践する上での道標となるような示唆が導出できるのではないかと考えている。
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Causes of Carryover |
平成30年度に参与観察を行う予定でいたが、協力を依頼していた教員より、令和元年度開講予定のゼミナールについて了承が得られた。当該授業は、担当教員にとって初めての実践であり、有意義なデータを得られると期待し、調査を1年間遅らせることにした。それに伴い、期間延長の申請を行い承認されたため、当該助成金が生じている。
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Remarks |
Analyzing Faculty Members Mindset in Higher Education: Students’ Growth Expected through Undergraduate Seminars
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Research Products
(5 results)