2017 Fiscal Year Research-status Report
自己理解促進ツールによる発達障害学生に対するシームレスな支援に関する研究
Project/Area Number |
17K19890
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
末富 真弓 筑波大学, ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター, 准教授 (90793919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
名川 勝 筑波大学, 人間系, 講師 (60261765)
杉江 征 筑波大学, 人間系, 教授 (70222049)
佐々木 銀河 筑波大学, ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター, 助教 (80768945)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 発達障害 / 大学生 / 自己理解 / 障害特性 / 合理的配慮 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は研究計画の1年目として、(1)自己理解促進ツール開発に関する検討会の立ち上げと、(2)発達障害学生におけるニーズ調査の実施を計画した。 まず(1)検討会の立ち上げについては、メンバーとして、修学支援・学生相談・キャリア支援の研究分担者3名のほかに、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センター職業センター(以下、障害者職業センターとする)の協力を得て設置・開催した。検討会においては、大学生において発達障害を自認しているか否かが障害特性の自己理解において重要な点であること、就職支援の領域で用いられているナビゲーションブックとの共通点や相違点、発達障害学生が自身の苦手な部分に注目しやすいことを考慮した得意な部分への気づきの促し方について議論された。また、検討会メンバーでは適宜メールでの意見交換を行った。検討会の設置・開催により、専門領域が異なるメンバーからの活発な意見交換が行われ、続くニーズ調査における調査項目や自己理解ツールのプロトタイプ開発に反映することができたため、次年度以降も継続して実施していく。 (2)発達障害学生におけるニーズ調査の実施については、研究代表者・研究分担者が所属する筑波大学のほか、発達障害学生支援を行う他大学を含めた5校を対象に「大学生等における得意・苦手に関する自己理解および伝達に関するニーズ調査」を実施した。上述した検討会で挙げられた意見を反映させ、発達障害を自認する大学生において、自己理解の重要性の認識や障害特性を第三者に伝えることに関する認識を聴取するようアンケート調査の項目を設計した。加えて、質的な情報を聴取するために追加でインタビュー調査も実施した。調査は平成29年度中に完了し、現在データ解析作業を進めている。 加えて、(3)検討会で得られた意見を反映させて、自己理解促進ツールのプロトタイプ開発に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年目の研究計画では、「(1)自己理解促進ツールに関する検討会の立ち上げ」、「(2)ニーズ調査の実施」を予定し、2年目に「(3)自己理解促進ツールのプロトタイプ開発」、「(4)自己理解促進ツールの運用」を行う予定であった。しかしながら、研究分担者間及び障害者職業センターとの協力体制が非常にスムーズであり、自己理解促進ツールのプロトタイプ開発に必要な要件を早期に固めることができ、自己資金を利用して「(3)自己理解促進ツールのプロトタイプ開発」まで1年目で着手するとともに、本科研費を有効活用して「(2)ニーズ調査」の実施対象範囲を拡大することができた。 これにより、2年目当初には「(4)自己理解促進ツールの運用」を開始することが可能となり、発達障害を自認する学生がツールを使用した際の意見および「(2)ニーズ調査」の結果をもとにして、自己理解促進ツールをより学生に使いやすい形へ改良できる状況となっている。したがって、当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる平成30年度は、「自己理解促進ツール」の運用と改良を進める。まずは研究実施体制が整っている筑波大学において発達障害を自認する学生を対象に、自己理解促進ツールのプロトタイプのモニター協力を依頼する。実際に大学に在籍する発達障害学生が自己理解促進ツールを使用することで、自己効力感などのポジティブな変容が見られるかpre/postのアンケート調査及びインタビュー調査により効果検証を行う。また、当初の計画より進展しているため、効果検証の結果をもとに、必要であれば適宜自己理解促進ツールの改良を行う。また、研究協力が得られた学生の周囲の第三者(教職員、就労先、その他の支援者など)に対してもアンケート調査及びインタビュー調査を行うことで、自己理解促進ツールの導入後に、学生の特性を理解しやすくなったか、合理的配慮が提供しやすくなったかなどを聴取する予定である。 最終年度となる平成31年度には、筑波大学以外の他の大学に対し、改良した自己理解促進ツールを導入する計画である。また、3年間の研究成果として、1年目のニーズ調査の結果や自己理解促進ツールの効果検証結果について学会発表や論文投稿を行うとともに、自己理解促進ツールの社会還元を目指したいと考えている。
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