Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は, 発育に対する肯定的態度の育成を目指す6時間の保健教育のプログラムを実施し, 実証的評価を行うことにより効果的な指導内容及び方法について検討することであった. 方法は, 2校の公立小学校4年生, 介入群(61人), 対照群(77人)を対象に, 準実験デザインにより実施し, 評価は, 発育に対する態度の尺度, 自尊感情尺度の効果及びプロセス評価で検証した. 調査は, 授業1週間前に事前調査を, 授業終了後の1週間後に事後調査を, 授業終了1か月後に介入群のみ追跡調査を行った. その結果, 「体型に関する肯定的な感情」について効果が認められ, 事前において「体型に関する肯定的な感情」が低い児童に効果的であると示唆された. さらに効果の維持については, 「体型に関する否定的な感情」と「体型に関する肯定的な感情」について, 追跡調査まで平均値が事前事後調査よりも下回ることはなく, 学習効果が維持されていたことが示唆された. 一方, 「他者との比較」や「体の変化に対する受け止め」においては, 効果が認められなかった. 得点の変化を性別で比べると, 女子においては, 平均値が低下しており, 他者との比較が必要以上に過度にならないよう, 発達の段階に応じた継続的な指導の必要性が示唆された. 加えて, 指導の効果を上げるためには, メディアからの影響の学習と併せながら, 他者と比較しがちな容姿や体型などの事例を取り上げるなど指導内容の工夫が必要と考えられた. 自尊感情尺度については, 事前・事後の比較では効果がなかったが, 介入群の事前・事後・追跡調査の比較では, 「自己価値づけ」において効果がみられた. プロセス評価におけるプログラムの理解度は高かったが, 体の働きの変化に対する気持ちは, 男子に比べて女子が否定的に感じている割合が高く, 集団指導では補いきれない個別の不安や悩みについては, 発達段階に応じた個別の保健指導等で補う必要があると考えられた.
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