2019 Fiscal Year Annual Research Report
An International and Interdisciplinary Study of 'Anti-Psychology' in British Modernism
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18H00653
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
遠藤 不比人 成蹊大学, 文学部, 教授 (30248992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秦 邦生 東京大学, 大学院言語社会研究科, 准教授 (00459306)
中井 亜佐子 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 教授 (10246001)
田尻 芳樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20251746)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 反心理学 / 精神分析 / モダニズム文学 / リズム / 表象不能性 / 知覚横断性 / ラカン的享楽 / 国際性、学際性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年9月に開催した国際会議の基調講演のためオックスフォード大学のローラ・マーカス教授を招聘したが、マーカス教授の近刊書のテーマである「モダニズムとリズム」の内容を事前に知ることができる特権的な機会となった。講演後の質疑応答において、リズムという知覚横断的で表象が困難な心的強度における「反心理学性」という議論をすることができたことは、この科研費の主題的関心からして極めて重要な意義を帯びるものであった。また、マーカス教授からは、研究代表の遠藤のこの会議における口頭発表について、これも非常に貴重なコメントを頂戴し、当該研究の進展にとって不可欠な視点を獲得できたことも付言しておく。マーカス教授も、この2日にわたる国際会議のレヴェルの高さに感銘を受け、初来日であったのだが、今後ともこの科研費のメンバーとの研究上の相互交流を約束して帰国されたのだが、今年に急逝されたことは甚だ残念なことである。
またこの年度の3月には、ペンシルベニア大学のジャン=ミッシェル・ラバテ教授を招聘し、成蹊大学においてモダニズム文学と精神分析に関する国際会議を開催することができた。精神分析は、この研究課題において「反心理学」を代表する言説となっている。まずはラバテ教授が当該テーマに関する基調講演を行い、それへの応答がなされ、その後ラカン派精神分析、精神分析史、イギリス文学を研究する研究者が口頭発表をし、ラバテ教授から鋭利なコメントを頂戴したことは大きな意味があった。本来の予定であれば、そのあと京都大学において、もう一つの会議が開催されるはずであったが、コロナ・ウイルスの感染者急増により米国への帰国が困難になる危惧から、京都での会議を断念せざるを得なかったことは残念であった。
コロナ禍のためこの年度で執行不能となった予算を2021年度に繰越し、ラバテ教授によるオンラインの講演を21年6月に実施したことも付言する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度3月にラバテ教授が京都大学での国際会議を断念して急遽米国に帰国せざるを得なかったことが象徴するように、コロナ・ウィルスの蔓延によって、その後の研究計画に甚大な影響があったことを強調しなくてはいけない。この研究課題は、題目で強調したように「国際性」が重要な意味を持ち、具体的にいえば、数多くの国際会議の開催、海外での研究メンバーによる発表、それらの活動による国際的な研究上の相互交流の実現を主要な目的としている。そしてそういった活動のために大部分の予算が組まれている。しかし、コロナ・ウイルスの蔓延によって、国外への出張、国内への招聘が不可能になってしまい、予算の多くが年度内に執行できず、次年度に繰り越しせざるを得ず、しかしそのような措置をしても執行できなった予算もある。
その一方で、代替策として、Zoomを使用した国際会議や海外の研究者による講演などを計画・実施もしながら、どうにか国際的で学際的な当該分野に関する研究を継続している。2022年度の末には、対面による国際会議の開催を目指しているが、感染の状況について予見が困難であるために、これについても予定通りになるか確言はできない現状である。
具体的な研究成果としては、学的交流の結果として、研究代表の遠藤がラバテ教授の編集した論集(ラウトリッジ社出版)の英語論集に寄稿を依頼され、当該研究課題に関する論文がそこにおいて活字化されたことを付言しておきたい。また他の研究メンバーも数多くの研究業績をあげている。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、感染状況の予測が困難であるので、確たることをいうことはできないが、2022年度の末に大規模な国際会議を成蹊大学で開催することを予定しているのと同時に、今年度の夏季休暇中にZoomによる会議を計画している。そこでは、日英の若手研究者を招聘し、当該テーマについてさらに議論を深めたい。
また、研究代表の遠藤は、2022年11月に英国エディンバラ大学における対面の国際会議で発表の予定である。これについてもこの時期には感染が沈静化しているだろうという前提に基づいているが、場合によってはオンライン参加になる可能性を排除できない懸念が残る。研究メンバーの中井は、所属先で研究休暇を許可され、2022年度の後期から英国ケント大学にて訪問教授として研究活動をする予定になっている。これが当研究課題に意義ある貢献をすることが期待される。同時に、研究メンバーの田尻と秦も、オンラインによる国際会議での発表、国際会議の主催について、精力的な活動を継続している。
先ほどラバテ教授との交流により、遠藤が英語論集に論文を寄稿したことに触れたが、11月のエディンバラ大学での国際会議の主催者と遠藤が共編著を英国で出版した(ピーター・ラング社)ことを付言する。また研究メンバーも同様な研究交流による成果を確実に上げていることにも触れておく。このように、今後とも可能な限りで精力的に海外との研究交流を維持し、それを確実に論文出版などの成果につなげていくことが研究上の推進方針となっている。
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