2018 Fiscal Year Annual Research Report
日本文化の対話的発展の比較文学的研究―世界のポップ・テクストをめぐって
Project/Area Number |
18H00657
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
平石 典子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20293764)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ヨコタ村上 孝之 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (00200270)
山中 由里子 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 准教授 (20251390)
SEN RAJLAKHI (センラージ・ラキ) 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 助教 (20795611)
加藤 百合 筑波大学, 人文社会系, 教授 (50326815)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 比較文学 / 現代文学・文化 / ポップ・テクスト / 対話的発展 / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2018年度は、基礎的な文献収集を行うとともに、欧州、中東、ロシア、アジア地域で関係者からの聞き取り調査や、テクストの渉猟・収集を行った。各地域の図書館、博物館、書店やコミックショップなどで行ったポップ・テクストの出版状況や研究状況の調査と分析からは、日本のポップ・カルチャーの受容が、それぞれの地域でのポップ・テクストの新たな特徴に結びついたり、新しい文化を生み出しつつあることが明らかになってきた。また、作品の流入・変容と発表媒体としてのインターネット及びスマートフォンの力の大きさも確認することとなり、テクストの翻訳・翻案の問題の重要性が改めて浮き彫りになった。こうした調査結果をもとに、今後は分析・考察を進め、論文執筆を行う。 なお、さまざまな地域で、研究発表を伴う国際研究交流を行った。本研究課題のメンバーが複数参加したものとしては、2018年9月の英国日本学会(BAJS)におけるパネル"Generate Fictions: Representations of Pregnancy in Modern Japanese Literature and Manga,"同月のプーラ大学(クロアチア)における研究集会、12月の比較文学の国際学会におけるパネル”Crafting Aesthetics and Ideologies: Reading ‘Symmetrical’ Faces and Bodies in Japanese Novels to Pop-texts”などが挙げられる。さらに、2019年1月には日本学生支援機構主催の国際シンポジウム「ポップテクストの力―日本文化の対話的発展に向けて」の企画を本科研で担当し、イタリア・英国・中国・ドイツ・トルコ・日本のマンガ家・イラストレーター・編集者・研究者によるパネルとディスカッションを行い、大きな反響を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度であり、各メンバーが海外出張を通して情報と資料の渉猟、収集に多くの時間を割くことになったが、その結果、欧州(イタリア・英国・クロアチア・スウェーデン・ドイツ・ラトビア)、中東(イラン)、ロシア、アジア(インド・インドネシア・中国・香港・モンゴル)など、これまで研究がなされてこなかった地域を含む複数の地域で調査を行うことができた。また、公益財団法人中島記念国際交流財団助成事業として開催した国際シンポジウム「ポップ・テクストの力―日本文化の対話的発展に向けて」は、イタリア・英国・中国・ドイツ・トルコ・日本のマンガ家・イラストレーター・編集者・研究者が集った研究集会であり、本科研の研究課題項目①「メディア・ジャンルの対話と新文化の創出」の進展に大きく貢献するものとなった。 国際研究者交流と国際情報交換は、予想以上に進み、特に、日本のポップ・カルチャーの影響が大きい欧州の国として知られるイタリアにおいて、複数の地方の研究機関で研究者や情報提供者のネットワークが構築されつつある。こうした研究交流は、2019年度以降の研究会や国際シンポジウムなどでさらに展開させ、研究成果としてまとめていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き、海外調査による情報・資料の集積及び整理を進めるとともに、本研究プロジェクトにおける研究者交流を進める中で構築されつつある共同研究による活動をさらに活発化させ、研究会や学会におけるディスカッションで研究の深化を図る。こうした継続的研究は、研究課題項目①、②の両方で行われるが、研究会及び討論の場では、具体的な事例研究により実証的な問題提起を心がけつつも、新たなテクスト研究を志向する点から、挑戦的な仮説への取り組みや問題設定、斬新な切り口を積極的に歓迎するものとする。成果発表については、それぞれの研究課題のもとに行っていく。 研究課題項目①「メディア・ジャンルの対話と新文化の創出」については、引き続き調査を行うとともに、2018年度に顕在化した現代のポップ・テクストにおける翻訳・翻案の問題についてもグループで取り組んでいく。個別事例研究を通して、現代のテクストにおける技法や伝統の変容と、それぞれの地域での展開、及び新文化創出の様相を明らかにし、日本と海外の文化の相互作用を明らかにしていく。2019年度以降も、研究分担者、研究協力者をはじめとする内外の研究者が集う研究者集会や学会パネル参加を積極的に行う予定である。 研究課題項目②「異分野との融合」については、2018年度の調査の中で、現代アートにおけるポップ・テクストの位置付けの問題や、近年ハイ・ファッションブランドがマンガ家やポップ・アーティストと積極的にコラボレーションを行っていることなどが明らかになってきた。今後は、こうした問題意識をさらに進め、研究会などの開催によって議論を深めて具体的な成果発表に繋げていきたい。 なお、本プロジェクトのまとまった成果として、メンバーに内外の研究者を加えた英語による研究論集の出版を企画しているが、できるだけ早い出版を実現させたい。
|
Research Products
(20 results)