2019 Fiscal Year Annual Research Report
中国語における文法的意味の史的変遷とその要因についての総合的研究
Project/Area Number |
18H00662
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大西 克也 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (10272452)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 英樹 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 名誉教授 (20153207)
木津 祐子 京都大学, 文学研究科, 教授 (90242990)
松江 崇 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (90344530)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 言語学 / 中国語 / 歴史文法 / 文法的意味 / 受動構文 / イレギュラリティ / 個別化機能 / 疑問文末助詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は2度にわたって研究会を開催し、中国語が否定、及び時空間をどのようにカテゴリー化してきたかを通時的に考察することを集中的に討議したほか、各分担者は以下の実績を上げた。 大西は、上古中国語において高度に発達した使役構文に対して受動構文が極めて貧弱であり、特定の時空間に発生した出来事の描写には受動文が回避される傾向があることに着目し、対格言語に属する上古中国語は力の授受関係において、非常に強い動作主志向性を具えていたことを指摘した。 木村は、現代中国語において文法機能もしくは意味機能の面で体系的な整合性を欠く複数の形式を取り上げ、それらのイレギュラリティが当該の諸形式の歴史的な変遷の経緯に起因するものであることを明らかにし、現代語の文法現象を歴史文法の脈略で捉え直すことの意義と重要性を指摘した。 木津は、「「箇」の個別化機能と定指“量名”構造」では、現代諸方言で見られる、“量詞+名詞”構造が持つ定指機能が、「箇」の原初的機能である名詞の個別化機能に由来することを明らかにした。「唐通事の官話教本『三折肱』について」では、江戸時代の中国語学習書『三折肱』が現存することを明らかにし、その書誌的解説を行った。 松江は、上古魯方言の疑問文末助詞「與」「乎」の機能差異について歴史語用論的な分析を行い、「與」は話者指向・「乎」は聞き手指向が強いという仮説を、国際シンポジウムで発表した。さらに疑問文末助詞・並列接続詞などの観点から、三世紀の江東方言の文法史的位置づけについての検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各分担者は、それぞれが担当する時代の中国語において各形式が担う文法的意味の切り分けに積極的に取り組み、着実に成果を上げている。とりわけ大西が第27回国際中国言語学学会年次大会招待講演として発表した上記成果は、受動構文の分析を通じて上古中国語の持つ強い動作主志向性を明確に指摘したこれまでにないものであり、中国語におけるヴォイスの歴史的研究に新たな視点を提供することが期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
計画は概ね順調に遂行されており、次年度も当初の計画通り研究を進める予定である。計画の変更を必要とする問題は生じていないと考えている。
|