2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Regional Toshogu Shrines and the Deification of Ancestors in the Edo Period
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18H00711
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
岸本 覚 鳥取大学, 地域学部, 教授 (80324995)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曽根原 理 東北大学, 学術資源研究公開センター, 助教 (30222079)
中川 仁喜 大正大学, 文学部, 准教授 (30633482)
佐藤 眞人 北九州市立大学, 文学部, 教授 (40222020)
山澤 学 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (60361292)
大川 真 中央大学, 文学部, 准教授 (90510553)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 東照宮 / 神格化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、諸国東照宮(因幡東照宮)を中心に近世日本における「国家神」としての東照大権現および東照宮信仰の特徴を解明することを目的とし、三つの研究方法【A】【B】【C】を設定している。それは【A】本山上野寛永寺凉泉院・比叡山との関係を分析し、本山―諸国東照宮の基礎構造をあきらかにすること、【B】大雲院文書の特性を活かした因幡東照宮と別当寺が持つ鳥取藩内の役割を明らかにし、その地域性・独自性を明らかにすること、【C】諸藩における祖先神格化と東照宮信仰の関係や、東アジアにおける「神君」家康・東照宮信仰の思想的・宗教的特質の考察、である。 【A】については、大雲院の日記類の調査によって上野寛永寺との関係を構造的に明らかにしようとしているが、この際鳥取県立博物館所蔵鳥取藩政資料の活用は不可欠である。本年度は、大雲院文書調査と並行して「家老日記」という膨大な藩政資料の中核にあたるものの解読とピックアップの作業を開始し、鳥取藩がどこまで諸国東照宮の別当寺に関わっていたのかを明らかにする作業に入った。 【B】については、まだ十分着手していない。大雲院の組織(院主や副寺らの役割)と天台宗末寺との関係、そして神領(500石)富安村の支配など大雲院の藩内における基礎的な事実関係は、次年度以降数年がかりの取り組みとなる。ただ、関連する資料は、鳥取藩政資料「家老日記」および「在方諸事控」のなかにもあり、学生・院生にもこうした抄録作業を行ってもらうことも必要となる。 【C】については、研究分担者のテーマだけでなく、来年度海外においてシンポジウムを開き、様々な研究者との交流のなかでさらなる進展をはかるつもりである。とりあえず本年度は、研究代表者が鳥取だけでなくいくつかの諸国東照宮の資料の収集にも努めたが、研究分担者も日光東照宮や諸国東照宮の研究成果を蓄積してきており、その情報共有を始めたところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、計画通り①大雲院・鳥取県立博物館・叡山文庫の調査、②研究会の実施を実施した。 【調査】大雲院において研究代表と研究協力者は月2回ぐらいのペースで大雲院文書の調査を実施した。研究分担者については、遠方のため10月22日23日、2月13日の年二回調査に来鳥してもらい、大雲院文書の調査を行った。本年度は大雲院の庫裏に所蔵されている近世文書を中心に整理・撮影を実施し、おもに近世中期からの日記類、祈祷史料関連を中心に行った。また、法事や儀礼関係の「法則」など新たな史料の発見もあり、予定史料の調査には達していない。 また、鳥取県立博物館所蔵の「家老日記」については、学生・院生らが週1回程度の割合で因幡東照宮関連項目の抄録を行い、該当箇所の翻刻とデータ入力を実施した。近世初期の20年程度の史料のピックアップは終了している。 さらに、叡山文庫の調査については、10月20日・21日研究代表者と研究協力者の二名で概要調査を行った。おもに滋賀院の史料を中心に、大山と大雲院との関連がわかるものの選択を行った。大雲院調査および叡山文庫調査と、県立博物館資料のデータ入力など基本的な調査はおよそ計画通りに進んでいる。 【研究会】10月22日第一回の研究会を行い、調査の進捗状況の報告と研究分担者の研究テーマについて議論を行った。まだ初年度のではあるが、すでに大雲院や諸国東照宮についての研究を専門的に実施しているメンバーのため、重要な研究課題を提起することができたと言える。二度目の研究会は、大正大学で実施し、研究代表者による調査報告と、研究分担者の各テーマの報告、そして来年度のシンポジウムについて打ち合わせを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平常の史料調査は、予定通り研究代表と研究協力者三名およびアルバイト(学生・院生)組織を中心に、因幡東照宮別当寺であった大雲院文書を中軸に調査を行い、併せて鳥取藩政資料の調査も実施しつつ、史料の撮影・翻刻・データ打ち込みなどを実施する。叡山文庫の滋賀院門跡文書(大山寺文書簿冊215冊)は、本格的な調査を今年度から実施予定しているが、膨大にあることからなるべく大雲院関連のみに絞りたい。 研究代表者は、以上のデータなどを研究分担者と共有し、計画通り調査・研究を進めていく。まず、研究代表は本山上野寛永寺凉泉院・比叡山に関係する史料の収集と分析を実施し、本山―諸国東照宮の基礎構造をあきらかにする。その際、注目していきたいのは比叡山財政の根幹に関わる大山領3000石「朱印」の授受をめぐる寛永寺・比叡山・大雲院・鳥取藩それぞれの役割である。そのため、研究協力者と叡山文庫の調査も入れる予定である。 研究分担者は、昨年度の調査のなかで検討したテーマを進めてもらう。まず、諸国東照宮のもつ基本的な機能として、祈祷・城内祈祷など鳥取藩に関わる儀礼・祭礼(中川仁喜担当)、東照宮祭礼や歴代将軍祭祀(年忌法要)などの重要行事(曽根原理担当)、また、近世中後期最大の問題の一つであった大雲院の大師堂再建や信仰の問題の検討(山澤学担当)、さらに幕末期の諸国東照宮の問題として神仏分離と大雲院との関係(佐藤眞人担当)、「尊王」思想(大川真担当)についての調査研究等を進める。 こうした研究の方向性を、日本の宗教・文化に広げ、国内外の研究者と議論することで本研究の深化を図るために、今後は日本の宗教・文化に関わる海外の研究者と議論する機会(シンポジウム)を設けることにした。こうした成果が、次年度以降の調査研究の成果ににつながっていくことを期したい。
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Research Products
(8 results)