2019 Fiscal Year Annual Research Report
南都の未整理文書聖教にもとづく寺社とその周辺社会の調査研究
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18H00717
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
吉川 聡 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 文化遺産部, 室長 (60321626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 晃宏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, その他部局等, 副所長 (30212319)
横内 裕人 京都府立大学, 文学部, 教授 (50706520)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 東大寺文書 / 興福寺承仕 / 奈良 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の主眼は、奈良関係の古文書・聖教のうち東大寺や個人が所蔵する未整理資料について、悉皆的な調査研究を実施して資料を保存・公開・活用する道筋を開き、かつ、南都の寺社と、寺社を中心として発達した社会を、総体として理解することを目指すことにある。 2年目である2019年度は、新修東大寺文書聖教の第86函~第97函の調査や、第86函・第98函等の写真撮影を実施した。その中には江戸時代の法会関係文書・東大寺末寺の文書など、東大寺の法会や寺院経営などの実態をうかがうのに有益な史料が存在した。また新修東大寺文書聖教の一部である中村純一寄贈文書について、明治初年の日記の翻刻作業を実施した。明治維新期の奈良の世情をうかがい得る史料である。 さらに、研究分担者の横内裕人氏が中心となって、東大寺中性院が所蔵する襖・屏風の下張り文書の調査研究を実施した。糊を剥がし調査する作業をおこない、またそこから見いだした文書の釈読・検討作業を実施した。その結果、重要史料の一部を公表することができた。公表史料は、法華堂堂衆に関する史料群で、鎌倉時代から室町時代に及んでいる。近年注目を集めている「宝珠院文書」に関連するものであり、既知の史料と合わせて考察することにより、今後の研究の進展が期待される。 加えて、個人所蔵の興福寺関係資料について、悉皆的な整理・調査を実施した。また、奈良の旧家の個人蔵の資料について、連携研究者・研究協力者の協力の下で、戦国時代文書の調査・釈文検討作業をおこない、公表に向けて準備にとりかかっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新修東大寺文書聖教の調査は、5日間の調査を1回、4日間の調査を1回実施した。東大寺中性院の調査も継続的に実施し、中性院の調査は、その成果の一部を公表するところまでこぎ着けた。興福寺関係の個人蔵資料調査も、のべ10日間実施した。奈良の旧家関係の資料も、戦国時代文書の詳細な調査検討をおこなっている。以上から、おおむね計画どおりに調査研究を進められたと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
新修東大寺文書聖教・興福寺関係個人蔵資料の調査は、従来通り継続的に調査を進める必要がある。東大寺中性院所蔵史料は、一部を公表したが、まだまだ未公表資料があるので、地道な調査研究を続ける必要がある。一方、奈良の旧家の個人蔵資料は、調査研究が進みつつあるので、その成果をとりまとめて公表にまで運んでいく方策を考える必要がある。
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Research Products
(5 results)