2019 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical and empirical investigation of linkages between altruism, sanction, parochialism, outgroup agression
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18H01077
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 伸幸 北海道大学, 文学研究院, 教授 (80333582)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 協力 / 利他性 / サンクション / 偏狭さ |
Outline of Annual Research Achievements |
多数の非血縁者から成る社会で相互協力を達成可能なのは人間のみである。しかし、人間のいかなる本質がそれに寄与しているのかは、人文学から生物学までの幅広い領域において多数の研究がなされてきたにもかかわらず、未だ明らかではない。本研究は、現在有力な理論仮説の一つである強い互恵性に焦点を当て、3つの角度からその妥当性を検討する。強い互恵性仮説によれば、協力行動と罰行動、偏狭さ、そして外集団攻撃行動の間には連動が存在し、その連動は適応的であり、それにより相互協力が維持されていることになる。そこで本研究では、①連動が適応的であるという主張の理論的再検討、②連動が実証データにより支持されるかどうかの検討、③支持されるとしたらそれが進化時間において形成されたものか、比較的最近形成されたものかの検討、の3つの方向から、この仮説の妥当性を厳密に検討し、妥当性が低い場合には代替仮説として評判仮説を提唱する。 2018年度の実験結果から、本人の利他性と外集団に対する行動との間にはほとんど関連が見られなかった。そこで、2019年度は、状況特性と外集団に対する行動との間の関係をより厳密に検討した。具体的には、共感を高めることにより内集団と外集団に対する利他行動に差が生じるかどうかを検討したところ、共感を高めても外集団に対する利他行動は低下しなかった。また、集団間で代理報復を行う行為者の評判は、集団間に葛藤がある場合の方がない場合よりも悪いということも明らかになった。これらの結果は、更に外集団攻撃行動の妥当性に疑問を投げかけるものであり、偏狭であることが非適応的であることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、実験及び調査を行うことができたため、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
利他性と罰行動、偏狭さ、外集団攻撃行動との間の連動が利他性の進化にとって必要条件であるかどうかを検討するモデル研究のデザインはほぼ完成したため、実際にシミュレーションを開始する。集団間攻撃に関する大規模な実験室実験も当初の計画にはあったが、それには多数の実験参加者が必要である。従って、新型コロナウイルスの影響が広範囲にわたる現在、一時計画は中断せざるをえない。
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