2018 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of optically-functional titanium surface with compatibility of bone forming ability and antibacterial activity and its application to implants
Project/Area Number |
18H01718
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
成島 尚之 東北大学, 工学研究科, 教授 (20198394)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小笠原 康悦 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (30323603)
上田 恭介 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40507901)
金高 弘恭 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (50292222)
佐原 亮二 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主幹研究員 (30323075)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生体材料 / チタン / 抗菌性 / 光機能 / 骨形成能 / アナターゼ / 表面処理 / 酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科において14%という高確率で発症するインプラント周囲炎への対応を念頭に、光機能により骨形成能と抗菌能を両立させたチタン表面を創製し、インプラント自身が組織との再密着による「治癒」を担い、かつ患者自身による「予防」も可能にするという創造性溢れる概念「セルフメンテナンス機能」を具現化することを目的として研究を行った。平成30年度の進捗は以下のとおりである。 (a) チタン表面創製のためのプロセス構築:まず、スパッタリング法によりAu薄膜を工業用純チタン(CP Ti)表面に蒸着した。Au蒸着時間(最長180s)を変化させることでAu膜厚を制御した。Au膜厚は蒸着時間に比例し、180s蒸着で約60nmの膜厚であった。次に、Au蒸着CP Tiに対して、大気酸化(873K, 0.3-43.2ks)を施した。表面処理層のXRD分析からルチルと金属Auの存在が確認された。SEM観察から試料表面には平均フェレ径100nmの粒子が観察された。XPS分析からも金属Auの存在が示唆されたことから、CP Ti表面に目的とするAu粒子含有TiO2膜が作製できたと判断した。一方で、Au粒子含有TiO2膜の基板との密着力が低いというデータが得られており、今後の課題となった。 (b) 抗菌性評価・抗菌性発現機構の検討:フィルム密着法(JIS R1752)を使用して可視光照射下(波長λ>400nm)におけるAu含有TiO2膜の抗菌能を評価した。細菌としては大腸菌を使用した。抗菌活性値は初期のAu蒸着膜が増加するに伴い向上した。蒸着膜厚40nmで目的とする抗菌活性値2(生菌数が2桁減)が得られた。可視光存在下でヒドロキシラジカルが形成されたことから、ラジカル種が抗菌能を担うことが示唆された。 (c) 骨形成能の評価:予備実験としてCP Ti基板上での細胞培養試験を行い、細胞毒性がないことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書で提案したAu蒸着+大気中高温酸化という新規なプロセスが抗菌能を発現するAu粒子含有TiO2膜形成に有効であることを示すことができた。このプロセスは基板にTi-Au合金を用いる従来の手法と比較して(イ)Au量を削減できる、(ロ)基板として従来の歯科用チタン・チタン合金を利用できるため表面処理に伴う機械的特性を考慮する必要がない、といった利点を有しており、有力な表面処理層構築に成功した。一方で、作製されたAu粒子含有TiO2膜の基板との密着力が低いという問題点が明らかとなった。一般に高温酸化によりチタン表面に形成される酸化皮膜は、膜厚に依存するものの、密着力は高い。しかしながら、本プロセスではAu粒子含有TiO2膜とチタン基板との界面にAuリッチ層が形成されてしまい、それが密着力を低下させていると考察した。 抗菌活性値2を示すAu粒子含有TiO2膜を作製できたこと、Au蒸着層からAu粒子への形状変化が想定通り進行しバイオセンサーなどへの応用が示唆されたこと、など当初の計画以上の進捗が見られたが、密着力低下の問題などが明らかになったために骨形成能の評価が遅れていることを考慮して、概ね順調に進展していると自己評価した。なお、成果の公表に関しては、研究開始当初から論文を投稿するという当初計画は実行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はTiO2膜の材料学的・生物学的評価を行うとともに、昨年度明らかになったTiO2膜とチタン基板との密着力が低いという課題を検討する。具体的実施計画を以下に示す。 (a) TiO2膜の作製と評価:スパッタリング法によりチタン基板に膜厚を変化させたAuまたはAu+Ti層を作製する。その後、大気酸化および二段階熱酸化によりチタン基板上にAu粒子含有TiO2膜を作製する。特に形成されるAu粒子含有TiO2膜と基板との間の密着力とプロセスパラメータに着目して研究を遂行する。 (b) 抗菌性評価:フィルム密着法(JIS R1752)を使用して2018年度に設備備品として導入した波長可変光源を用いて波長を430~790 nmと変化させた可視光照射下において、(a)で作製したTiO2膜の抗菌能を評価する。 (c) 反応性スパッタリングによるAu粒子含有TiO2膜の作製:表面処理層と基板との密着力向上を目的に、Ti+AuをターゲットとしたAr+O2雰囲気中での反応性スパッタリングを検討する。ターゲット組成やスパッタリング条件と得られる表面処理層の組織や抗菌能の関係を調査する。本項目はポルトガルのミーニョ大学との共同研究である。
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