2018 Fiscal Year Annual Research Report
高速かつ高精度な配座解析を軸とした理論計算が先導する不斉有機触媒の開発
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18H01969
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
蒲池 高志 福岡工業大学, 工学部, 准教授 (40403951)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 英治 九州大学, 理学研究院, 助教 (70782944)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 配座解析 / 有機分子触媒 / 不斉合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機分子触媒は有毒な重金属の残留の心配がなく、レアメタルの高騰や枯渇の問題に対 応できる理想的な触媒であり、その開発が社会的に求められている。開発したConFinderプログラムを使えば、通常のPCを用いても数日しか計算時間を必要としない、これまでにない高速かつ高精度な配座解析が可能となる。 本研究では研究分担者と、この高精度な配座解析法を用いたCinchona Alkaloid由来の四級アンモニウム塩を触媒とする新規不斉塩基加水分解反応の開発を進めている。エステル類の不斉加水分解は、生体触媒によるエステル類の不斉加水分解は医薬品の合成中間体として有用な光学活性カルボン酸を得る手法として学術的、工業的に広く利用されている重要な反応である。 研究を進める中で、この配座解析手法を実際の触媒スクリーニングに利用するためには、さらなる高速化が必要となった。そこで本年度は、ConFinderプログラムを大幅に見直し、配座解析の効率化を図った。並列処理への対応、ファイルIOのボトルネック解消などの改善を積み重ねた結果、従来よりも3倍程度の高速化を達成できた。これにより、実験を行う前に反応性を予測することが可能になった。 また、分担者はキニーネ由来の2-シアノベンジル基を有する相間移動触媒 (PTC 1) を用いることで、α位に嵩高い脂肪族置換基または芳香族基を持つN-Bzアミノ酸のHFIPエステルの不斉塩基加水分解が高収率かつ高立体選択的に進行することを見出した。ConFinderを用いて発生させた遷移状態の有力候補構造からTS計算 (M06-2X/TZVP) を行った。 その結果、 実験結果と良い一致を示すエステル不斉加水分解の遷移状態構造を見出すことにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り四級アンモニウム塩を用いた効率的なエステル不斉塩基加水分解反応の理論計算が進行しており、いくつかの触媒について実験による検証も進んでいる。また、計算速度の加速のためConFinderプログラムを大幅に改善し、計算時間の短縮が可能となった。また、関連した論文も出版できた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験から、四級アンモニウム塩を用いたエステル不斉塩基加水分解反応におけるエナンチオ選択性の実験データを蓄積できた。本年度は、計算から得られた活性化エネルギー、反応熱、相互作用エネルギーなとどのデータとの相関関係に着目したデータサイエンスに基づく解析を実施する予定である。これにより、これまでの計算で見落とされていた重要な要素を発見できると期待している。
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