2019 Fiscal Year Annual Research Report
鳥獣害の軽減と農山村の活性維持を目的とする野生動物管理学と農村計画学との連携研究
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18H02289
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
鈴木 正嗣 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (90216440)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊吾田 宏正 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (60515857)
江成 広斗 山形大学, 農学部, 准教授 (90584128)
九鬼 康彰 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (60303872)
武山 絵美 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (90363259)
東口 阿希子 岡山大学, 環境生命科学研究科, 特任助教 (90804188)
山端 直人 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 教授 (00503856)
八代田 千鶴 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (20467210)
横山 真弓 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 教授 (50344388)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 鳥獣 / 農林業被害 / 野生動物管理 / 農村計画 / 捕獲 / ゾーニング / 集落 / 年齢査定 |
Outline of Annual Research Achievements |
人口減少が顕著に進行する東北日本海側を対象に,健全集落の存続可能性と野生動物の分布回復を考慮した野生動物管理の課題整理を継続した。山形県では,狩猟者の属性と捕獲実績にかかわる時系列データを加味することで,個体群管理に関する課題整理を進展させた。 愛媛県の離島では,地域ぐるみのイノシシ被害対策組織の運営に関わる現状調査を行った。その結果,地域自治会主導型の対策組織が,持続的な組織財政運営や人材確保に有用なモデルであることが示された。一方,捕獲個体の年齢と体重を分析したところ,約90%が1歳以下であった。捕獲現場では成獣の捕獲に成功していると認識されていたが,実際には幼獣捕獲に偏っていたことが明らかにされた。 岡山県では,被害軽微段階における獣害対策への住民の選好を調査した。この段階では,情報共有・方針検討の場の設定が選好されていたが,行政には担当窓口・施策が存在していないという不整合が示された。また,侵入防止柵の導入意向は,集落被害の発生を機に生じる傾向も明らかとなった。鳥取県では,ツキノワグマの出没集落を対象に,果樹の所有・管理状況ならびに住民の対策意識等を調査した。その結果,果樹所有者の自発的な対策意識が極めて低いことが課題として明確化した。 環境省と県の担当部署に対し,指定管理鳥獣捕獲等事業に関する聞き取り調査を実施した。同事業による捕獲事業の多くは,個体数の大幅削減に結びついてはいなかったが,捕獲従事者の育成等に活用されているという側面も確認された。また,「シカによる森林被害緊急対策事業(林野庁)」による緊急捕獲を実施している県では,「林業関係者を主体とする捕獲体制」や「森林施業と捕獲との一体化」等が可能であることが示された。農業被害対策における「加害個体の捕獲」については,対象獣の罠への侵入状況に応じた餌の配置により,捕獲実績を向上させ得ることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人口減少が顕著な地域における諸課題,地域主体の野生動物管理体制のあり方と検討を要する事項,集落・市町村・都道府県レベルごとの固有課題,指定管理鳥獣捕獲等事業の成果と改善すべき点,林業関係者の関与の方向性など,予定していた観点からのデータ収集と解析は滞りなく進んでいる。 ただし,新型コロナウイルス対策の関連で今年度当初の調査が中止となったほか,予定していた海外調査も見合わせる可能性が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
東北日本海側を対象に,人口減少が生み出す個体群管理・生息地管理・被害防除に対する課題群の整理を継続すると同時に,社会的に実装可能な手段を検討する。この作業を通じ,鳥獣管理に関わる現行制度の課題の抽出も試みる。 松山市の離島では,捕獲者を対象に聞き取りとアンケートを実施し,その結果と捕獲数・被害状況とを比較検討することで,地域主体かつ持続可能な野生動物管理体制の必要要件を抽出する。捕獲個体の解析も継続し,アクションリサーチの一環として,捕獲手法を検討し直す取り組みを地元に提案し,個体数削減の効果を検証する。 生息拡大域において早期に対策を導入した集落での実態調査を行い,その実施条件および選好への影響要因を解明する。これにより,被害域拡大を防ぐための計画的な対策実施・施策のあり方を提示する。鳥獣被害防止特措法に基づく市町村の鳥獣被害防止計画にも焦点を当て,その運用と被害防止効果の実態を把握する。また,計画策定のプロセスや主体の問題意識といった計画理論の各論にもメスを入れつつ,あるべき被害防止計画を提案する。県レベルの行政システム内に存在する対策進展の阻害要因を明確化するため,複数県の獣害対策推進に関する行政機能の差を調査・分析する。とくに,獣害に強い集落を育成・支援できている県とそうではない県との差異を,行政システム等の違いからその要因を明らかにする。 指定管理鳥獣捕獲等事業については,新たな対象地を増やし,その優良事例と課題の整理を深化させる。また,国外の先進事例とも比較し,新たな制度設計についての提案を試みる。「シカによる森林被害緊急対策事業(林野庁)」を実施している10道県では,事業実施の効果および課題についてのアンケート調査を行う。「林業関係者が主体となったシカ被害対策」を実施している地域では,この体制下における事業実施の効果の実質化条件を明らかにする。
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Research Products
(27 results)