2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of risk assessment method on brain development focusing on aberrant regulation of DNA methylation
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18H02341
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
渋谷 淳 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 卓越教授 (20311392)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | In vivo発達神経毒性試験法 / 化学物質リスク / 海馬神経新生 / DNAメチル化異常 / 簡易スクリーニング法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、海馬歯状回の神経新生、化学物質の曝露によるメチル化異常に着目して最終的には一般毒性試験の枠組みで不可逆影響検出を可能とする脳発達リスク評価法の構築を目指している。平成30年度は既に体系化している神経新生指標の免疫組織学的解析で不可逆影響を確認済みの神経新生障害物質(不可逆影響既知物質:プロピルチオウラシル(PTU)、バルプロ酸(VPA)、グリシドール(GLY))のラット発達期曝露実験を実施し、海馬歯状回において転写制御がメチル化異常を介して破綻する遺伝子を次世代シークエンス解析により網羅的に検索した。令和元年度は不可逆影響既知物質の発達期曝露により過メチル化および下方制御を示した候補遺伝子につき、離乳時(生後21日、PND 21)と成熟後(PND 77)でreal-time RT-PCR法によるmRNA発現の検証を実施した。その結果、PTU、VPA、GLYにより、PND 21で39、7、23遺伝子、PND 77で12、3、0遺伝子の転写の下方制御が確認された。これらの遺伝子の変動は、顆粒細胞系譜の増殖・分化、その後のニューロン移動、神経可塑性、神経新生の外部調節系への影響を示唆し、発達神経毒性のバイオマーカー候補となりうる。また、ヒトで障害誘発性が懸念され、実験的に神経新生障害誘発性が知られている重要脳発達障害物質 (酢酸鉛、塩化アルミニウム、エタノール) のラット発達期曝露実験を行い、神経新生指標の免疫組織学的手法による解析とその不可逆性を検討し、それぞれの海馬歯状回の顆粒細胞系譜、神経新生の外部調節系であるGABA性介在ニューロンへの影響を確認した。今後、不可逆影響既知物質の曝露により得られた候補分子について免疫組織染色による解析とメカニズム解析を進め、重要脳発達障害物質の発達期曝露試験、成熟後曝露試験で検証解析を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不可逆影響既知物質(PTU, VPA, GLY)のラット発達期曝露試験を実施し、PND 21の児動物海馬歯状回のMethyl-SeqとRNA-Seqでプロモーター領域の過メチル化およびmRNA発現の下方制御を示す遺伝子を同定した。さらに、PND 21とPND 77でreal-time RT-PCR法とメチル化シトシン結合蛋白質(MBP)を用いたメチル化特異的定量PCR(MSP)によるmRNA発現、DNAメチル化の検証を実施した。real-time RT-PCRでは、PTU、VPA、GLYにより、PND 21で39、7、23遺伝子、PND 77で12、3、0遺伝子の転写の下方制御が確認された。MSPでは、PTUでPND21に1遺伝子のみで有意な過メチル化が見られたが、VPA、GLYで有意な過メチル化は検出されなかった。 ヒト重要脳発達障害物質(酢酸鉛、塩化アルミニウム、エタノール)のラット発達期曝露実験を行い、対象動物の海馬歯状回の神経新生障害に関する解析を進めた。酢酸鉛の発達期曝露は、曝露終了時にtype-2からtype-3神経前駆細胞の増殖を促し、それにはCALB2陽性介在ニューロンによる神経新生増強の関与が示唆された。また、未成熟顆粒細胞への分化阻害も認め、それにはreelinシグナルの減少の関与が示唆された。介在ニューロンへの影響は成熟後まで持続しており、不可逆的な神経新生障害が示唆された。塩化アルミニウムの発達期曝露は、曝露終了時にtype-2からtype-3神経前駆細胞の増殖及び分化を促進または未熟顆粒細胞への分化を抑制している可能性が考えられた。エタノールの発達期曝露は、曝露終了時にtype-2a神経前駆細胞の増殖を促し、それにはCALB2陽性介在ニューロンによる神経新生増強の関与が示唆された。また、未成熟顆粒細胞への分化阻害も認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
不可逆影響既知物質の発達期曝露試験におけるDNAメチル化の検証方法については、Methylation Specific High-Resolution Melting法を用いて追検討を実施予定である。DNAメチル化の検証、候補分子の免疫組織染色による解析、神経新生障害メカニズム検証(real-time RT-PCR、免疫組織学的解析などによる候補分子の顆粒細胞系譜の増殖・分化・ニューロン移動、神経可塑性、神経新生の外部調節系への関与の検討)は次年度に実施する。不可逆影響既知物質の発達期曝露で得られた過メチル化による転写の下方制御分子について、ヒト重要脳発達障害物質の発達期曝露試験の児動物の海馬歯状回を用いて検証解析する。さらに、重要脳発達障害物質を成熟動物に曝露し、海馬歯状回の神経新生指標の免疫組織学的解析を進め、不可逆影響既知物質と重要脳発達障害物質の発達期曝露動物での検討で得られた候補分子について検討する。最終的には一般毒性試験の枠組みで発達神経毒性のバイオマーカーとなりうる分子を同定することを目指している。
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Research Products
(4 results)