2018 Fiscal Year Annual Research Report
血縁の効果と群形成の効果を完全に分離した上での社会性の進化因の解明
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18H02502
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長谷川 英祐 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (40301874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 和也 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 講師 (00648280)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会進化 / 行動生態学 |
Outline of Annual Research Achievements |
目標を達成するために、2018年5から9月まで、北大構内演習林札幌試験地にある、シオカワコハナバチの巣集団からサンプリングを行った。5月頃より、第1世代繁殖期の巣が開き始め、最終的に50ほどの巣が観察された。この時期は越冬したメス1匹による単メス営巣なので、採餌より帰巣するメス蜂を捕獲し、左中脚ふ節をDNA解析のため、採取し、-80度で冷凍保存した。各個体には個体識別可能なマーキングを施し、捕獲日のうちに元の巣穴に戻した。7月からの第2営巣期には300ほどの巣穴が開き、250までナンバーリングし、雨の日以外のほぼ毎日、出入りするハチを捕らえ、DNA解析用サンプルを取り、その日のうちにマークした上で元の巣に戻した。最終的な採捕確率は94%に達したので、ほとんどのハチにマークが出来た物と考えられる。8月の繁殖虫出現期には、内径7mmのアクリルチューブ5cmほどに、細かい目の網をかぶせた捕獲器を各巣の出入り口に刺し、出走する繁殖虫を捕らえた。採取的に30巣ほどから繁殖虫を採取できた。サンプルは-80度保存し、DNA解析用に保管した。 詳しいデータ解析は終わっていないが、一部のマーク個体が捕獲層以外の巣から際捕獲されるなど、興味深い事実が明らかになっている。また、第1営巣期と第2営巣期の開口巣数があまりにも増えたため、第1営巣期に生産された子供が、第2営巣期に独立営巣をする可能性が非常に高く、2019年度には、この点に留意してサンプリングを行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析に必要なデータを1年分確保できた。今後のDNA分析や行動解析などにより、シオカワコハナバチの社会性進化の主要因が何かを明らかに出来ると考えられる。すでに、一部の巣から捕獲された第2世代メス(ワーカー)が、最初の捕獲層とは異なる巣から際捕獲されるなど、血縁構造とは無関係に見える興味深い現象が確認されている。今後、データを詳しく解析することにより、モデルでは決して解決しない「実際には何が起こっているのか」を'明らかに出来ると予想され、計画はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度はデータを補強するため、前年と同様なサンプリングを行う。8月まではサンプリングを行い、その後は採れたサンプルからのDNA抽出と分析、ハチの採集記録からの個体の行動パターンの解析、その行動パターンと血縁構造の関係の分析などを行い、提案した目的を検証するためのデータを出すことを第1の目的とする。これらのデータから、以前に確認されている、非血縁者協力巣のデータを十分な数集め、社会性(=協力)の進化が血縁関係とは無関係に生じ得ること、シオカワコハナバチの本個体群では、むしろ群形成の効果が社会進化の種導因であることを明らかにしていく予定である。
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Research Products
(4 results)