2019 Fiscal Year Annual Research Report
Cerebral deposition due to excrete promotion indicated by cerebrospinal fluid metabolic pathway impairment of neurotoxic protein
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18H02916
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
新井 一 順天堂大学, 医学部, 学長 (70167229)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 円 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50317450)
宮嶋 雅一 順天堂大学, 医学部, 教授 (60200177)
菅野 秀宣 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (90265992)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脳脊髄液代謝 / 認知障害 / 特発性正常圧水頭症 / アルツハイマー病 / アミロイドβオリゴマー / タウ蛋白 / 進行性核上性麻痺 / パーキンソン病 |
Outline of Annual Research Achievements |
特発性正常圧水頭症(iNPH)は認知障害,歩行障害などの症候を呈する高齢者特有の疾患で,主に脳脊髄液の吸収障害を原因とし,髄液シャント術が主な治療である.iNPHの一部にはアルツハイマー病(AD)にみられる病理を合併した症例のあることが知られており,これらの症例ではシャント治療を行っても症状の改善が乏しい.申請者らの先行研究では,これらのAD合併例においては,病的蛋白の脳内沈着が神経毒性蛋白の髄液排泄を阻害している可能性を示した.本研究では,髄液シャント術後のiNPH症状,特に認知機能の改善には,髄液を介した病的な神経毒性蛋白の排泄が必須との仮説を立て,iNPHの臨床像,髄液及び血液中の神経毒性蛋白量,タウおよびアミロイドPETのデータなどから治療予後を予測したiNPHの重症度分類を確立するとともに,病的蛋白の髄液排泄経路を解明することを試み,以下の研究1-3を実行した. 「研究1:iNPH患者検体を用いたシャント介入前の脳脊髄液蛋白バイオマーカーとPETイメージングによる両者の相互性の証明とβアミロイド脳沈着(AD病理像)を有するiNPHの特徴,重症度分類の確立/研究2:AD病理を伴ったiNPHシャント介入による安全性,有効性の証明/研究3:加齢とともに正常圧水頭症を発症する動物モデル作成し病的蛋白の髄液代謝の促進による蓄積速度の遅延化の立証,代謝経路の解明」である. iNPHの病態変化として脳脊髄液中の56-kDa(~30-kDa)のAβオリゴマーを定量測定を実現した.Aβオリゴマーは脳脊髄液のターンオーバーが低下し停滞した脳環境であるiNPH病態下にて,他の変性疾患と比較し有意に高値であることを突き止め,このような脳内環境の長期暴露により神経変性が進行することを予測した.さらに髄液シャントによる脳脊髄液の停滞の解除により,髄液中Aβオリゴマーが減少することを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
iNPHの前向き研究については,引き続き患者登録を継続しており,18F-flutemetamol(アミロイドβ,Aβ)-PET陽性患者の髄液バイオマーカーの特性が徐々に明らかとなっている.多くのiNPH患者脳においてはPET上のβアミロイド所見は,陽性とはならず,脳脊髄液中のβアミロイド値では判断し得ず,リン酸化タウの大幅な上昇を確認できないと陽性所見が得られないことが判明した.脳脊髄液中のAβオリゴマーは脳脊髄液のターンオーバーが低下したiNPH病態下にて,他の変性疾患と比較し有意に高値であることがわかり,このような脳内環境の長期暴露によるAβ-PET陽性すなわち神経変性の進行を予測し,今後の研究課題としている. また,研究目的である病的蛋白の髄液代謝の促進による蓄積速度の遅延化の立証,代謝経路を解明するため,動物モデルを用いた基礎研究も並行して行った.脳室壁の線毛運動に関わる遺伝子(DNAH14)の障害をきたす遺伝子改変マウスを作成し,加齢とともに水頭症の発症を確認した.脳室内に注入した蛍光ビーズの運動を観察することで脳室線毛運動に指向性の異常を生じていることを確認し,脳室拡大に伴い認知機能障害を呈することを証明した.さらに生体内の目に見えない非常に微弱な発光や蛍光を超高感度冷却CCDカメラで捉え、定量化できるin vivo イメージングシステム(IVIS)を用いて、溶質の脳からのクリアランスを測定する実験方法を確立した.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度となるため,ひきつづきiNPH患者の前向き登録を継続し,シャント介入後の変化を観察し,データをまとめる作業を行い,論文化する作業となる.解析結果から脳脊髄液の停滞を解除されると脳脊髄液の環境は劇的な変化があり,βアミロイド(Aβ)はオリゴマー化が減少し,モノマーが上昇することが判明した. 実臨床データから推察されたアミロイド凝集体の違いによる脳からの排泄の違いを確認するため,動物モデルを用いた蛍光物質Genhance (分子量1,086g / mol)とAngioSense (70,000g/mol)の脳実質からのクリアランス効果を確認する.すでに実験を始めており、髄液のドレナージ効果は分子量が小さいものほど減少効果があることが判明した.このことをさらに実証するため,免疫染色およびWestern-blottingによって該当蛋白の線毛における発現の低下を証明し正常圧水頭症動物モデルを確立する.動物用MRIによる脳室評価によって交通性水頭症であることを証明し,週齢による水頭症の発現率を確認する。髄液中に色素を注入し切片作成することで,髄液クリアランスの障害を証明する.また金粒子を脳実質、髄液および血管内に注入し脳組織を観察することで,脳実質と髄液間の物質輸送の異常を証明する.
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Research Products
(15 results)