2019 Fiscal Year Annual Research Report
戦後体制(レジーム)とは何であったか――「戦後日本」政治経済史の検証
Project/Area Number |
18H03625
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
松浦 正孝 立教大学, 法学部, 教授 (20222292)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
保城 広至 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (00401266)
空井 護 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 教授 (10242067)
白鳥 潤一郎 放送大学, 教養学部, 准教授 (20735740)
中北 浩爾 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (30272412)
浅井 良夫 成城大学, 経済学部, 名誉教授 (40101620)
石川 健治 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (40176160)
砂原 庸介 神戸大学, 法学研究科, 教授 (40549680)
満薗 勇 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (40735750)
孫 斉庸 立教大学, 法学部, 准教授 (50727211)
河崎 信樹 関西大学, 政策創造学部, 教授 (70512705)
小島 庸平 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 准教授 (80635334)
小野澤 透 京都大学, 文学研究科, 教授 (90271832)
小堀 聡 名古屋大学, 経済学研究科, 准教授 (90456583)
加藤 聖文 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (70353414)
溝口 聡 関西外国語大学, 外国語学部, 助教 (60781937)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 戦後日本 / 戦後体制 / 戦後レジーム |
Outline of Annual Research Achievements |
「戦後体制」の何が戦前・戦時と異なり、どのような新たな体制を築いたのか。それはその後どのような変遷をたどり、どこでどう変わって現在に至ったのか。本研究は、その解明のために異分野(政治史、外交史、政治学、憲法学、経済史)の若手・中堅の最先端研究者を集めた多分野横断による問題発見型プロジェクトである。申請当初の予定では、初めの2年度は、各メンバーの業績と学問背景をより深く理解するため、毎回2名ずつの主要業績をテキストとする書評会と、その2名が それぞれ自分野における「戦後」をめぐる 時期区分論と構造について報告する研究会を、年4回開くこととしていた。それにより、各分野が暗黙の了解としている「戦後」についての「常識」を再検討し戦後体制に関する問題の洗い出しを行うことを、主要な目標としていた。 第二年目である本年度は、前年度に引続き2019年末までは予定通り順調に研究会と各自の研究を進めた。沖縄合宿を含む3回の研究会で、政治資金、アメリカによる戦後対沖縄政策、アメリカの対中東政策、「世界史」における「現代史」と「戦後」、商店街、社会経済史における「戦後」区分、東アジア経済論、経済史における1990年画期問題、自民党一党支配体制、「戦後」概念自体の意味などのトピックを議論し、新たな論点を整理した。ゲストにより、家族、給食(災害と食糧)、「未復員」から見た戦争トラウマ、沖縄基地、国際比較の中の日本官僚制、など最先端テーマについての充実した研究会を持ち、「戦後日本」の凝集である沖縄基地の現状視察も行った。 しかし2020年に入っての新型コロナウィルス感染拡大で、3月予定の京都研究会は延期を余儀なくされた。感染が収束し次第(長期化の場合はオンラインで)研究会を行い、プロジェクト後半における成果発表に向けての枠組みを定め、それまでは各自がそれぞれの課題の研究を深化させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」に記した通り、当初第二年度の計画として予定していた研究会を概ねスケジュール通り(開催地を若干変更した以外は)実施し、当初期待した以上の充実した研究会を重ねることができた。それらを通じ、当初考えていた「戦後日本」をめぐる新たな研究動向を把握・整理し、それぞれの専門分野だけに閉じ籠っていては知り得なかった論点や情報、アプローチなどを参加者が発見・共有するという目的を一層充実することができた。 共同研究を進める中で、当初の構成メンバーだけでは対応できない、しかし極めて重要なテーマについても、研究分担者の追加やゲストの招聘などによって補足し、研究を活性化する方向へと切り替えることができた。 しかるに、先述したように、4回の研究会のうち最後の研究会を行うことができずに6つのセッションが延期となったままであり、それを踏まえた総括、即ち、今後の共同研究の進め方と最終成果の公表の仕方についての議論ができずに終わっている。同じ空間を共有しての研究会や、出版社などとの交渉が必要であるが、その再開の目途は4月現在では立っていない。当面は、これまでの共同討議などで得られた共通認識を基礎に、各メンバーが自己領域でそれぞれにできる研究を進めている状況である。 しかし、後述するように、新型ウィルスの感染拡大により、日本だけでなく世界が全く「新しい世界」に変わる可能性が多くの識者によって指摘され始めている。それにより、本プロジェクトのテーマである「戦後日本」の意味付けが大きく変わる、あるいは「戦後日本」がこれによって終焉する可能性がある。これは研究開始時には全く想像していなかった課題であり、こうした変動をプロジェクトの中に織り込めれば、本プロジェクトは予定を大きく超越した意義を身につけることができる。 その意味では、当初予定からはやや遅れているが飛躍する可能性を秘めているとも言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、新型コロナ・ウィルスの感染拡大が収束に向かい、対面型の研究会を行うことができるようになったら、まずは2019年度の最後に予定していた研究会を行う。多分野横断の総合討議によるこの問題発見型プロジェクトでは、その生産性に限界があるからである。その上で、最終成果をどのようにとりまとめて公表するのか、「戦後日本」についてのどのような新たな構図を描くのかについての方向性を集中して議論し、後半2年の各自の論考作成方針を決める予定である。感染拡大が収束しなければ、オンライン会議やネットによる意見交換を補助的に行う。 但し、グローバルな感染症という第二次世界大戦と比較される事件により、本プロジェクトの対象とする「戦後日本」が暗黙の基幹的価値としてきた「民主主義」と「人権」、手放しのグローバル化、経済成長・開発などが大きく変わる可能性が生じている。そのことは、分野により「戦後日本」を終焉させると共に、「戦後日本」の評価自体を大きく変える可能性がある。未曽有のグローバルな「感染症戦争」の中にあって、以前と全く同じアプローチで「戦後日本」を考えることは難しくなったと言えよう。これまで蓄積してきた計画や成果を進めつつ、再検討が必要になった部分については修正の議論も行いたい。本プロジェクトが検討してきた「戦後日本」理解を前提として、各自がそのことを洞察することで、当初考えられなかった一段階上の「戦後日本」の意味を発見する可能性がある。 本プロジェクトが前半の研究会で整理してきた、①時期区分を通じて「戦後」の由来と意味を問うこと、②「戦後」の「日本」の境界を問うこと、③「戦争」の延長としての「戦後日本」を再発見することといったこれまで得られた視点に加え、「コロナ以前/以後」という歴史的事件から「戦後」を相対化する視点も念頭に、各メンバーは研究会再開まで考察を深めつつ、各自の研究を進める。
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Research Products
(35 results)
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[Book] 東アジア経済史2020
Author(s)
堀 和生、木越義則
Total Pages
400(1-380)
Publisher
日本評論社
ISBN
978-4-53-555804-5
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[Book] 憲法訴訟の十字路2019
Author(s)
石川 健治、山本 龍彦、泉 徳治
Total Pages
460
Publisher
弘文堂
ISBN
978-4-335-35782-4
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