2018 Fiscal Year Annual Research Report
Circadian clock oscillation in primate SCN
Project/Area Number |
18H04015
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡村 均 京都大学, 薬学研究科, 研究員(特任教授) (60158813)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨永 恵子 (吉野恵子) 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (60256196)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 生体リズム / 視交叉上核 / 遺伝子 / 霊長類 / 脳神経機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞には時を刻む機構が遺伝子レベルでコードされており、全身の細胞で時が刻まれる。この多様な時間を統合するのが生体リズムの中枢である視交叉上核(Suprachiasmatic nucleus: SCN)であり、朝起き、夜寝るというシグナルは、この神経核で作られる。この神経核レベルのリズム発振の分子機構を解明するため、我々はマウスSCNに発現する遺伝子を網羅的にノックアウトして、行動検索するプロジェクト(SCN-Gene Project)を遂行したところ、多くのマウスが近年急増する概日リズム睡眠障害Circadian rhythm sleep disordersとよく似た兆候を示した。時計遺伝子の発現から生体リズムに至るまでには、さまざまなレベルで制御されて、その発現周期や位相が制御されている。そのうち、メッセンジャーRNAのm6Aメチル化修飾が生体時計の周期を調整する分子機構を、細胞および個体レベルで明らかにした。これは、m6A修飾が、時計遺伝子Perのリン酸化を司るキナーゼCK1d(カゼインキナーゼ1-delta)の選択的スプライシングを引き起こし、異なる機能を持つキナーゼが量的に変動することにより、概日リズムの周期を調整することを明らかにした。さらに、老化による時差時の易致死性の分子機構として、SCNのバソプレッシンが関与していることを、受容体欠損マウスで証明した。また、時差時にSCNでIEG遺伝子群の発現が増強することを確認した。さらに、ヒトと同じ昼行性霊長類であるマーモセットで、生体リズムの実験モデル系を確立し、昼行性哺乳類で初めての実験系を立ち上げることに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
齧歯類(マウス)の実験系を霊長類(マーモセット)に適応するには、数多くのハードルがある。まず、齧歯類と同じ脳内機構で生体リズムが生み出されるのであろうか?そのため、骨格となる時計遺伝子(Per1, Per2, Per3, Cry1, Cry2, Bmal1, Dbp, E4bp4)の構造を検索したところ、コーディングの部位のみならず、それらの制御領域も、強く保存されていることが明らかとなった。また、視交叉上核SCNの機能も、両者ともその発振の中枢であることがわかった。さらに、マーモセット飼育可能な恒常環境室を作成し、自律発振時間機構があることを、行動リズム・体温リズム測定により明らかにした。光による位相依存的位相変動も明らかとなった。また、マウスのSCNに発現する受容体のうちいくつかが、マーモセットにも発現することが明らかとなった。これらの成果により、霊長類の生体リズムを物質レベルで探求する手段ができ、後の研究展開の大きな基盤となった。また、RNAレベルの制御や、時差の分子機構のマウスでの解明は、生体リズム障害がヒトでの大きな臨床課題となっている現代、霊長類での研究展開に大きな示唆を与えるものと言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の展開は、時計遺伝子発現制御部位の検索である。マウスとマーモセット共通の時計遺伝子発振の重要部位に変異を与えて、non-coding部位が真にFunctionalかどうかを検討する。これは、生物に共通して存在する、現在最も基盤とされる時計遺伝子の自己発振の仮説を生体レベルで実証するものである。さらに、今後、我々は、マウスでのSCN-Gene Projectで得られた成果を、昼行性霊長類マーモセットで検証する。今回用いるのは、マーモセットの脳内SCNにAAVウイルスベクターで、変異遺伝子を導入することである。マーモセットとマウスで共通のリズム発現に必須の遺伝子をマーモセットのSCNに、特異的AAVベクターを用いて活性制御するプロジェクトである。この遺伝子は、マーモセットはコーディングの部位だけでなくノンコーディングも高率でヒトと一致率が高い。さらに、このウイルスベクターに、ルシフェラ―ゼ遺伝子等発光遺伝子を導入して、マウスと同様に、SCNの活動周期のリズムをslice culture で検出する。
|
Research Products
(30 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Circadian oscillation of diurnal primate common marmosets (Callithrix jacchus) I. Physiological parameters2018
Author(s)
Maho SUGAWA, Yuka KONO, Teruaki FUJINAGA, Nami SATO, Teruo KANEKO, Aya SHIMADA, Keiko TOMINAGA, Jean-Michel Fustin, Hirotaka ONOE, Jiro YAMASHITA, Kaoru ISA, Tadashi ISA, Hitoshi OKAMURA
Organizer
第41回日本神経科学大会
-
[Presentation] Circadian oscillation of diurnal primate common marmosets (Callithrix jacchus). II. Cohabitation on rhythmicity2018
Author(s)
Yuka KONO, Maho SUGAWA, Teruaki FUJINAGA, Teruo KANEKO, Aya SHIMADA, Keiko TOMINAGA, Hirotaka ONOE, Kaoru ISA, Tadashi ISA, William J SCHWARTZ, Hitoshi OKAMURA
Organizer
第41回日本神経科学大会