2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J00064
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐野 克司 筑波大学, 人文社会系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | アッシリア帝国 / アラム化 / 強制移住 |
Outline of Annual Research Achievements |
アッシリアにおけるアラム化とは、一般的に、アラム系諸国家のアッシリアへの併合とそれに付随するアラム人の帝国内への強制移住、帝国行政におけるアラム語の採用とアッカド語・アラム語による二言語記録、帝国内におけるアラム商人の交易独占、そして多数のアラム人の中央行政府官僚・常備軍兵士としての採用を意味する。このアッシリアのアラム化は概説書にも必ず言及される有名な仮説であるが、未だ体系的な研究が提出されておらず、新アッシリア時代を専門とする研究者の間でさえ極めて曖昧にしか理解されていない。よって、前一千年紀前半のアラム人に関する先行研究を渉猟し、上記した個々の事象を裏付ける論拠とされてきた史料解釈の妥当性を検証したうえで、近年になって公刊された新史料を含む現存史料のデータを包括的に再検討し、アッシリアにおけるアラム化の実態を史料に基づいて解明する必要がある。 今年度は、新アッシリア時代におけるアッシリアのアラム化を人口動態的な観点から解明することを試みた。正確には、「アッシリアの強制移住政策」を主体的に扱った研究代表者の博士論文から関連するデータを抽出し、新アッシリア時代と称される約300年の間に各都市の民族構成がどのように変容していったのかを通時的に明らかにした。また、アッシリアの強制移住政策にかんする研究内容を日本オリエント学会で口頭発表するとともに、博士論文の出版用原稿を完成させ、ドイツの出版社であるUgarit-Verlagに提出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アッシリアの強制移住政策にかんするデータを活用し、約300年の間に帝国内の各都市において民族構成がどのように変容していったのかを調査した結果、少なくとも人口動態的な観点においてアッシリアのアラム化は過度に強調された現象であることが判明したため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従って、研究を遂行する。次に取り組む課題は「帝国内におけるアラム商人の交易活動」であり、王碑文・王室書簡・行政経済文書を渉猟し、交易に言及する史料を収集する。そして、これら史料から得られるデータの分析により、アラム商人が交易活動を独占したとする仮説の妥当性を批判的に検証する。
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Research Products
(2 results)