2019 Fiscal Year Annual Research Report
軟体部の進化から,頭足類の繁栄と多様性をもたらした殻形成と遊泳機能に迫る
Project/Area Number |
18J00750
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
竹田 裕介 北海道大学, 理学研究院, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 古生物学 / イメージング / 解剖学 / 古生態 |
Outline of Annual Research Achievements |
軟体動物の中でも頭足類は遊泳能力や強力な顎器を発達させることで海洋生態系の高次捕食者の役割を担っており,地質時代から現在にわたる頭足類の進化は海洋生態系の変遷を理解する上で欠かせない情報である.頭足類の(形態)進化は,化石記録の制約などから,有殻頭足類(アンモナイト類やオウムガイ類)と内殻性ないし無殻性頭足類(イカ・タコ類)で個別に扱われてきた.本研究では,両者に共通する構造である外套膜をはじめとした軟体部に注目することで,頭足類の形態進化を俯瞰的に解明することを目的としている. 化石頭足類(とくにアンモナイト類)は,炭酸カルシウムからなる外骨格が炭酸塩岩中に良好に保存されることで知られる.しかしながら,古典的な物理的剖出方法では軟体部を岩石中に認識することが困難であるため,化石頭足類の解剖学的特徴を把握し,その形態進化を理解することはほとんど不可能だった.今年度は(1)頭足類化石を含む白亜系炭酸塩岩のトモグラフィ分析と(2)不可視光撮影による頭足類化石の軟体部イメージングという,従来とは異なる2つの手法を実施した. (1)では北海道内で採集された50試料を超える岩石試料の分析を行い,内部構造の可視化を進めた.(2)ではレバノン西部の白亜系セノマニアン階上部から産出されるコウモリダコ類化石を分析した.マルチスペクトル撮影と高画素デジタルカメラを組み合わせた分析により,軟体部をこれまでより高精細に観察した.さらにスペクトル情報から軟体部の保存状態の推定を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年間で50試料を超える岩石試料のトモグラフィ分析を順調に進めることができており,これまでになく定量的な解析と考察が可能な量かつ質の高いデータが,当初の予想以上に収集されている.また,マルチスペクトル撮影においても,分析のセットアップに入念な時間をかけ,使用機材を選定したため,画像解析に耐えうる高画質な画像データを得ることができている.従来では不可能な質のデータが収集できているため,研究はおおむね順調に進展していると考えている. 一方で,収集したデータの解析や可視化には時間がかかっており,解析フローのさらなる最適化が必要である.
|
Strategy for Future Research Activity |
(a)本研究では現生種と化石種の比較が必要不可欠であるが,化石試料の分析と比べて現生種に関する分析が不十分である.現生頭足類のトモグラフィ分析を重点的に行う.また,肉眼解剖を組み合わせ,現生頭足類の軟体部(とくに外套膜)の解剖学的特徴を明らかにする.分析対象とする試料は北海道内の水産試験場および漁業組合と連携して入手する.分析データは化石種と比較し,軟体部の配置や形態,組織学的特徴の進化傾向を考察する. (b)今年度までに自ら確立した分析手法をまとめ,国際誌に投稿する. (c)トモグラフィ分析により収集した断層画像データの解析に時間を要しているため,この解析ワークフローの最適化を行う.
|
Research Products
(2 results)