2018 Fiscal Year Annual Research Report
状況理論に基づく情報の理論:その哲学的基礎と心的表象の内容理論への応用
Project/Area Number |
18J00778
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
次田 瞬 名古屋大学, 情報学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 状況理論 / チャンネル理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、状況理論に関する先駆的な仕事を行なってきた論理学者ジョン・バーワイズの晩年の著作Information Flowを精読し、加えてSituation Theory and Its Applicationsなどの研究書に収められた論考を参照することで、1980年代の状況理論から1990年代のチャンネル理論に至るまでの歴史的経緯を調査した。そこから得られた主な成果は三つある。 第一に、情報の流れに対して不可謬性を要求する立場(例えば、ドレツキ)と可謬性を認める立場(例えば、ミリカン)の対立は、チャンネルのコアとなる局所論理に健全性を要求するかどうかという論点に集約されるという見通しが得られた。 第二に、ドレツキが提案したゼロックス原理に関してより洗練された理解にたどり着いた。従来の文献の多くは、この原理を情報の流れに対する推移性の要求という仕方で定式化してきたが、この定式はおそらく多義的であり、正確には、情報が流れる複数のチャンネルの合成という操作を許容することと、情報が流れるチャンネル自体の推移性とを区別するべきである。このような把握によって、ゼロックス原理を認めるかどうかといった意見の対立の原因が奈辺にあるのか、ゼロックス原理を前提にすることで情報の流れの不可謬性を導くドレツキの論証をどのように定式化すればよいのか、といったかねてからの理論的問題に関して解決の見通しが得られた。 第三に、人工物の故障(malfunction)と算術などの形式体系の超準モデルとの類似性に対する気づきが得られた。これは情報の流れを自然界に存在する規則性を基礎にするものと決め込んでいた研究開始当初には予期していなかったことだが、記述のレベルでは構造的な類似性が見られるようである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に予定した研究計画で、本年度はバーワイズの晩年の著作Information Flow、ならびにSituation Theory and Its Applicationsなどの研究書に収められた諸論考を徹底的に読み込むことを通して、分類域(classification)・情報射(infomorphism)・局所論理(local logic)といった数学的概念についての理解を深めつつ、1980年代の状況理論から1990年代のチャンネル理論に至るまでの歴史的経緯を把握する、ということを目標に据えた。上述した研究実績の概要で述べた三つの成果は本年度の終盤に得られたため本年度中の発表には間に合わなかったが、すでに執筆には着手しはじめているため、当初の目標は達成され研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降は、状況理論に関する本年度の予備的な研究によって得られた成果に基づいて、バーワイズ流の状況理論をもとに情報の流れについての哲学的な一般理論を構築し、国内外の学会での発表を通じて洗練させていく。その狙いは次のようである。これまでの心の哲学における心的表象の内容理論は、自然界に存在する情報の流れを生物が利用することから表象が生じる、という考えを基本的なモチーフとして研究が進められてきたが、情報の流れというものを具体的・形式的に特徴づける段になると満足のいく合意が得られないのが現状であった。こうした背景を踏まえて、来年度の方策は、状況理論をベースとして、情報の流れに関する哲学者たちの多様な直観を整合的かつ統一的に記述することを可能にする枠組を立てる、というものになる。最終的には、この作業が状況理論を心的表象の内容理論へと応用するという本研究全体の目標の達成につながる。
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Research Products
(2 results)